電解質と体液/肺、腎による酸性物質の排出と血漿緩衝系のはたらき/重炭酸イオンの動き
重炭酸緩衝系は、次の平衡式によって、H+とCO2とを相互に変換している。
H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O + CO2 (H2CO3,重炭酸: HCO3-,重炭酸イオン) |
化学的平衡式の基礎については、補足の章で述べています。まとめるならば...
* 最初、H+もHCO3-もCO2も、濃度は正常範囲である。
* いずれかの物質が増減すると、その「変化を打ち消す方向」に、化学反応が進む。しかし...
* その変化が完全に消えるのではなく、小さく残る。すなわち、「変化量より少ない量」化学反応が進む。
「酸性物質の定義」、「生体内での生産」で学んだように、HCO3-はアルカリ性物質です。生体内の最重要なアルカリ性物質です。血漿HCO3-の正常値は24 mEq/Lです。
重炭酸緩衝系を実際に動かしてみましょう...(注意!!重炭酸緩衝系の作用のみをまとめました。下記の病態では、実際には、種々の代償が働き、血中の変化は「総和」のようにはなりません。これは、第7章で勉強しましょう。)
a:動脈血中のCO2濃度が上昇すると...
変化の前 | H+ | + | HCO3- | ←→ | H2CO3 | ←→ | H2O | + | CO2 |
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動脈血に最初に起こる変化 | ↑↑ | ||||||||
重炭酸緩衝系の作用 | ↑ | ↑ | ← | ← | ↓ | ||||
総和 | ↑ | ↑ | ↑ |
CO2が増大すると、重炭酸緩衝系は、H+ + HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2の方向に作用します。この化学反応は、CO2を減少させるので、「変化を打ち消す方向」です。「変化量より少ない量」化学反応が進むため、緩衝系により減少するCO2の量(↓)は、最初に増大する量(↑↑)より小さくなります。そのため、総和としては、CO2もH+も増大します。
b:動脈血中のH+濃度が上昇すると...
変化の前 | H+ | + | HCO3- | ←→ | H2CO3 | ←→ | H2O | + | CO2 |
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動脈血に最初に起こる変化 | ↑↑ | ||||||||
重炭酸緩衝系の作用 | ↓ | ↓ | → | → | ↑ | ||||
総和 | ↑ | ↓ | ↑ |
H+が増大すると、重炭酸緩衝系は、H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O + CO2の方向に作用します。この化学反応は、H+を減少させるので、「変化を打ち消す方向」です。「変化量より少ない量」化学反応が進むため、緩衝系により減少するH+の量(↓)は、最初に増大する量(↑↑)より小さくなります。そのため、総和としては、H+もCO2も増大します。
c:動脈血中のCO2濃度が低下すると...
変化の前 | H+ | + | HCO3- | ←→ | H2CO3 | ←→ | H2O | + | CO2 |
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動脈血に最初に起こる変化 | ↓↓ | ||||||||
重炭酸緩衝系の作用 | ↓ | ↓ | → | → | ↑ | ||||
総和 | ↓ | ↓ | ↓ |
CO2が減少すると、重炭酸緩衝系は、H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O + CO2の方向に作用します。この化学反応は、CO2を増大させるので、「変化を打ち消す方向」です。「変化量より少ない量」化学反応が進むため、緩衝系により増大するCO2の量(↑)は、最初に減少する量(↓↓)より小さくなります。そのため、総和としては、H+もCO2も減少します。
d:動脈血中のH+濃度が低下すると...
変化の前 | H+ | + | HCO3- | ←→ | H2CO3 | ←→ | H2O | + | CO2 |
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動脈血に最初に起こる変化 | ↓↓ | ||||||||
重炭酸緩衝系の作用 | ↑ | ↑ | ← | ← | ↓ | ||||
総和 | ↓ | ↑ | ↓ |
H+が減少すると、重炭酸緩衝系は、H+ + HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2の方向に作用します。この化学反応は、H+を増大させるので、「変化を打ち消す方向」です。「変化量より少ない量」化学反応が進むため、緩衝系により増大するH+の量(↑)は、最初に減少する量(↓↓)より小さくなります。そのため、総和としては、H+もCO2も減少します。
Challenge Quiz
重炭酸は 酸性物質 中性物質 アルカリ性物質 である。
重炭酸イオンは 酸性物質 中性物質 アルカリ性物質 である。
H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O +CO2だけにおいて、CO2が正常値から増大すると、平衡式は H+ + HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2 H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O + CO2 の方向に作用し、総和として(変化前と比較して)、H+は 増大し 変動せず 減少し 、HCO3-は 増大し 変動せず 減少し 、CO2の増大は 最初の増大より小さい増大が残る 完全に消えて正常値に戻る 逆に、正常値よりも減少してしまう 。
H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O + CO2だけにおいて、H+が正常値から増大すると、平衡式は H++HCO3- ← H2CO3 ← H2O +CO2 H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O+CO2 の方向に作用し、総和として(変化前と比較して)、HCO3-は 増大し 変動せず 減少し 、CO2は 増大し 変動せず 減少し 、H+の増大は 最初の増大より小さい増大が残る 完全に消えて正常値に戻る 逆に、正常値よりも減少してしまう 。
H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O + CO2だけにおいて、CO2が正常値から減少すると、平衡式は H+ +HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2 H++ HCO3- → H2CO3 → H2O +CO2 の方向に作用し、総和として(変化前と比較して)、H+は 増大し 変動せず 減少し 、HCO3-は 増大し 変動せず 減少し 、CO2の減少は 最初の減少より小さい減少が残る 完全に消えて正常値に戻る 逆に、正常値よりも増大してしまう 。
H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O + CO2だけにおいて、H+が正常値から減少すると、平衡式は H+ +HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2 H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O + CO2 の方向に作用し、総和として(変化前と比較して)、HCO3-は 増大し 変動せず 減少し 、CO2は 増大し 変動せず 減少し 、H+の減少は 最初の減少より小さい減少が残る 完全に消えて正常値に戻る 逆に、正常値よりも増大してしまう 。