呼吸/呼吸調節/中枢神経/概略
Bötzinger complex, PreBötzinger complexなどの吻側腹外側延髄(rostral ventral lateral medulla, RVLM)において、(睡眠時などの)不随意的呼吸の速さ(rhythm)と大きさ(pattern)とが生成(generator)されています。そのため、吻側腹外側延髄の障害では、種々の呼吸異常がもたらされます。徐呼吸 bradypnea、中枢性睡眠時無呼吸 central sleep apneaなどは、rhythm generatorの機能が低下するのですから当然かと思われます。また、呼吸リズムの安定性が保たれなくなります(別記のCheyne-Stokes呼吸では安定性は保たれています)。呼吸リズムの安定性が低下してバラバラなタイミングで吸息します。これは、不規則呼吸irregular breathing、失調性呼吸 ataxic breathing、ビオー呼吸 Biot breathingなどと呼ばれています。
腹側延髄内側は錐体路が位置しているので、障害されると、(呼吸を含め随意運動ができなくなってしまう)locked-in症候群がもたらされます。
尾側橋(caudal pons)には漸増性吸息neuronがあります。自動車で加速するとき、アクセルを徐々に踏み込むイメージです。尾側橋(caudal pons)の障害では、喘ぎ呼吸 gaspが起こります。アクセルを徐々にではなく一気に踏み込むイメージです。
尾側橋(caudal pons)には持続性吸息中枢 apneustic centerがあります。名前の通り、吸息を持続させる中枢です。当然、これを中断させなければ効率よく呼吸できません。この機能を吸息オフスィッチinspiratory off-switchといいます。吸息off-switch作用は2カ所に由来すると考えられています。
1:吻側橋(rostral pons)のN.ParaBrachialis Medialisにある呼吸調節中枢 pneumotactic center
2:肺伸展受容器からの感覚性入力
いずれも障害されると、吸息off-switchが作用しにくく、吸息が持続(apneusis)してしまいます。
大脳皮質の働き-1:意識的な機能(随意的運動、感覚)の中枢です。(「はい吸って、はいて」のような)随意的な呼吸
(voluntary respiration)では、脳幹(brainstem)の機能が一時的に抑制され、呼吸筋(respiratory muscles)に対して直接指令が伝えられます。この経路は内側の延髄(medulla oblongata)を通ります。
大脳皮質の働き-2:また、(発声、運動、排便などの)行動(behavior)、(驚き、怒りなどの)感情(emotion)によっても呼吸は調節されます。
大脳皮質の働き-1、2のために、覚醒時、呼吸リズムの安定度は低いのですが、睡眠によりこれらの作用は弱くなり、延髄のrhythm generatorのためにリズムが安定した呼吸になります。
大脳皮質の働き-3:脳幹全体の不随意的呼吸中枢全体を持続的に活性化し、感度を上げる作用があります(continuous drive on non-voluntary respiration)。そのため、大脳皮質の障害により、不随意的呼吸中枢の感度が下がり、Cheyne-Stokes呼吸という、周期的な呼吸が出現します。また、睡眠時、中枢性睡眠時無呼吸 central sleep apneaも生じやすいです。