電解質と体液/代償作用/代謝性アシドーシスに対する肺による代償(略した説明)

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2016年6月27日 (月) 20:42時点におけるAdmin (トーク | 投稿記録)による版
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POINT!

第6章では、腎臓の機能低下により酸血症がもたらされ、重炭酸緩衝系がH+→CO2方向へ変換することで酸血症が緩衝され、高CO2血症がもたらされることを学んだ。また、この際、重炭酸イオン(HCO3-)が減少することを学んだ。ここまでは下図のようにまとめられる。青丸は正常範囲であり、横軸はpH、縦軸はHCO3-濃度である。

01958.jpg

重炭酸緩衝系により、酸血症という負荷が肺と腎臓とで分担されたわけである。では、肺が分担すべき負荷をこなした、すなわち、過剰となったCO2の排泄を増大させた場合を検討してみよう。


発症前H++HCO3-←→H2O+CO2
原疾患(腎臓の機能低下)により最初に起こる変化↑↑↑↑      
重炭酸緩衝系の作用↓↓ ↓↓  ↑↑
<<ここまでの総和>>↑↑ ↓↓←→  ↑↑
肺による代償      ↓↓↓↓
重炭酸緩衝系の作用   
<<すべての総和>> ↓↓↓←→  

1段目(原疾患により最初に起こる変化、2段目(重炭酸緩衝系の作用)、3段目(ここまでの総和) 第6章で説明ずみである。ただし、矢印の数が2倍になっている。これは、単に説明の都合である。この状態で、重炭酸緩衝系は化学的平衡(←→)を保っている。
4段目(肺による代償)肺が分担すべき負荷をこなし、肺の機能が代償性に亢進する。理由はCO2量の増大だけではなく、代謝性アシドーシス(による酸血症)が直接的に呼吸を促進するのである。両者とも呼吸を刺激するため、O2は大きく減少(↓↓↓↓)する。 これは重炭酸緩衝系にとっては、新たな変化であり、3段目の平衡を崩す。
5段目

化学的平衡に外からの攪乱で変化が生じると、「変化を打ち消す方向」に化学反応が進むため、肺による代償(CO2↓↓↓↓)に対して

H+ + HCO3- → H2O + CO2

方向に反応が進行する。

また、「変化量より少ない量」化学反応が進むため、変化量は4段目より少なく、矢印は1本ずつである。

6段目(すべての総和)3段目から5段目までの(すなわち,1,2,4,5段目の)総和である。3段目、すなわち、肺の代償と重炭酸緩衝系の作用が加わる前の状態と比較してみよう。

*酸血症(pH低下)は緩衝(H+:↑↑→↑)されている
*高CO2血症は逆に低CO2血症になっている(↑↑→↓)

ここに注目しよう!
*HCO3-の低下がさらに進行(↓↓→↓↓↓)している


なお、     HCO3-の(正常値=24 mEq/Lからの)減少量×(1〜1.3)

=CO2の(正常値=40 mmHgからの)減少量

と言われている。

01959.jpg

肺による代償と重炭酸緩衝系の作用が加わることにより、酸血症(pH低下)が緩衝され、HCO3-の減少がさらに進行した様子を書き加えてみたのが左図である。


動画と音声での説明
Metabolic-acidosis-compensation.jpg

最初の病態として、酸が多く生成し、血中に放出れた場合を考えて見ましょう。あるいは、腎機能が低下した場合を考えてみましょう。酸の排出が低下します。これらにより、血中の水素イオン(H+)が増大します。

重炭酸緩衝系のバランスが乱されたので、「最初に起こったことを打ち消す方向」、つまりこの場合は右方向に反応が進みます。これにより水素イオン(H+)が消費されるからです。右向き反応で消費されるため重炭酸イオン(HCO3-)も減少、右向き反応で生成されるため二酸化炭素(CO2)が増大します。

「最初に起こったことが完全に打ち消されるわけではない」のですから、水素イオン (H+)が4増大すると、重炭酸緩衝系の作用により消費される水素イオン (H+)は、それよりも少ないので、2としましょう。重炭酸イオン(HCO3-)も2消費され減少し、二酸化炭素(CO2)は2生成され増加します。

最初の変化と重炭酸緩衝系の作用までをまとめると、このような新たな平衡が成り立ちます。

pHを横軸、重炭酸イオン(HCO3-)を縦軸とするグラフにおいて、水素イオン(H+)が増大することはpHが低下するので左方移動となります。重炭酸イオン(HCO3-)が減少することは下方移動となり、この状態はこのようにプロットされます。

二酸化炭素(CO2)が増大したことが、肺機能を促進します。これだけではなく、水素イオン(H+)が増大したことも、肺機能を促進します。二酸化炭素(CO2)の排出がとても多くなります。これにより、血中の二酸化炭素(CO2)は大きく減少します。これは肺による代償とよばれています。

これは、新しい平衡状態にあった重炭酸緩衝系のバランスを乱すことになり、「最初に起こったことを打ち消す方向」、つまりこの場合も右方向に反応が進みます。これにより二酸化炭素(CO2)が生成されるからです。右向き反応で消費されるため水素イオン(H+)は減少し重炭酸イオン(HCO3-)も減少します。

ここまでの総和をまとめたこのような新たな平衡が成り立ちます。

pHを横軸、重炭酸イオン(HCO3-)を縦軸とするグラフにおいて、代謝性アシドーシスと比べ、水素イオン(H+)の増大は小さくなり、左方移動が小さくなります。また重炭酸イオン(HCO3-)の減少が大きくなり、下方移動は大きくなります。

この状態はこのようにプロットされます。

Challenge Quiz

1.

代謝性アシドーシス(たとえば、腎臓の機能低下)に対して、重炭酸緩衝系が作用すると、(肺によって代償される前)HCO3-は正常値よりも  上昇 低下 する。

2.

代謝性アシドーシス(による酸血症)に対する肺の代償とは、CO2排泄の  増大 低下 である。

3.

代謝性アシドーシス(による酸血症)に対して肺が代償したのち、重炭酸緩衝系は、 H+ + HCO3- ← H2O + CO2 H+ + HCO3- → H2O + CO2 方向へ作用する。

4.

代謝性アシドーシス(による酸血症)に対する肺の代償作用とは、 重炭酸緩衝系がもたらす高CO2血症による呼吸促進 重炭酸緩衝系がもたらす高CO2血症だけではなく、酸血症による呼吸促進 であるため、 CO2血症がもたらされる。

5.

代謝性アシドーシス(による酸血症)に対する肺の代償作用と重炭酸緩衝系の作用により、HCO3-の低下は  さらに進行する 緩衝される

6.

代謝性アシドーシス(による酸血症)に対する肺の代償作用と重炭酸緩衝系の作用により、酸血症(pH低下)は  さらに進行する 緩衝される