「電解質と体液/病態/代謝性アシドーシスの分類」の版間の差分
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すなわち、「糸球体からろ過される不揮発性酸」が血漿中に増大する病態です。「糸球体からろ過される不揮発性酸」は水素イオンを解離し、このため、(アルカリ性物質である)HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>(重炭酸イオン)が消費されます。また、Cl<sup>-</sup>が増大しないため、anion gap(Na<sup>+</sup> ―Cl<sup>-</sup> ―HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)が増大するわけです。主なものとしては下記の3つがあります。いずれにおいてもH<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup | すなわち、「糸球体からろ過される不揮発性酸」が血漿中に増大する病態です。「糸球体からろ過される不揮発性酸」は水素イオンを解離し、このため、(アルカリ性物質である)HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>(重炭酸イオン)が消費されます。また、Cl<sup>-</sup>が増大しないため、anion gap(Na<sup>+</sup> ―Cl<sup>-</sup> ―HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)が増大するわけです。主なものとしては下記の3つがあります。いずれにおいてもH<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>←→H<sub>2</sub>O+CO<sub>2</sub>の平衡式は右に化学反応が進行(H<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>→H<sub>2</sub>O+CO<sub>2</sub>)します。 | ||
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このとき、「糸球体からろ過される不揮発性酸」が増大しているわけではないので、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>の喪失分、Cl<sup>-</sup>が増加します。そのため、anion gapは増加しません。高Cl<sup>-</sup>性代謝性アシドーシスとよばれることもあります。H<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup | このとき、「糸球体からろ過される不揮発性酸」が増大しているわけではないので、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>の喪失分、Cl<sup>-</sup>が増加します。そのため、anion gapは増加しません。高Cl<sup>-</sup>性代謝性アシドーシスとよばれることもあります。H<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>←→H<sub>2</sub>O+CO<sub>2</sub>の平衡式は左に移動(H<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>←H<sub>2</sub>O+CO<sub>2</sub>)するため、H<sup>+</sup>が増加し、代謝性アシドーシスになるわけです。 | ||
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大量に失われる電解質の中にHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が含まれています。そのために、血漿中のHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が減少し、重炭酸緩衝系の平衡がH<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup | 大量に失われる電解質の中にHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が含まれています。そのために、血漿中のHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が減少し、重炭酸緩衝系の平衡がH<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>←H<sub>2</sub>O+CO<sub>2</sub>の方向に化学反応が進行し、アシドーシス(による酸血症)がもたらされます。増大したH<sup>+</sup>の一部は「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合し、緩衝されます。ただし、「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合している水素(H)が増大しても「糸球体からろ過される不揮発性酸」(赤い四葉のクローバ)自体が増大するわけではないので、anion gapは増大しません。 | ||
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HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>の再吸収が障害されるため、血漿中のHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が減少し、重炭酸緩衝系の平衡がH<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup | HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>の再吸収が障害されるため、血漿中のHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が減少し、重炭酸緩衝系の平衡がH<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>←H<sub>2</sub>O+CO<sub>2</sub>の方向に化学反応が進行し、アシドーシス(による酸血症)がもたらされます。増大したH<sup>+</sup>の一部は「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合し、緩衝されます。ただし、「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合している水素(H)が増大しても「糸球体からろ過される不揮発性酸」(赤い四葉のクローバ)自体が増大するわけではないので、anion gapは増大しません。 | ||
2015年7月7日 (火) 14:14時点における版
anion gapが増加するか否かにより、代謝性アシドーシスが2つに分類されます。
血漿中のanion gapが増加する代謝性アシドーシス
すなわち、「糸球体からろ過される不揮発性酸」が血漿中に増大する病態です。「糸球体からろ過される不揮発性酸」は水素イオンを解離し、このため、(アルカリ性物質である)HCO3-(重炭酸イオン)が消費されます。また、Cl-が増大しないため、anion gap(Na+ ―Cl- ―HCO3-)が増大するわけです。主なものとしては下記の3つがあります。いずれにおいてもH++HCO3-←→H2O+CO2の平衡式は右に化学反応が進行(H++HCO3-→H2O+CO2)します。
変化前 | H+ | + | HCO3- | ←→ | H2O | + | CO2 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
最初に起こる変化 | ↑↑↑ | ||||||
最初の変化に近い平衡式の作用 | ↓↓ | ↓↓ | |||||
最初の変化から遠い平衡式の作用 | → | ↑ | ↑ | ||||
総和 | ↑ | ↓↓ | ←→ | ↑ | ↑ |
尿毒症(腎不全)
腎不全では、腎小体における糸球体ろ過量が減少し、「糸球体からろ過される不揮発性酸」のろ過量も減少、血漿中で増大します。赤い四葉のクローバが血漿中で増大したことに注目。水素イオンが解離し、アシドーシス(による酸血症)がもたらされます。
糖尿病性ケトアシドーシス
脂肪の無気的代謝が亢進してケトン体が増大します。赤い四葉のクローバの一部が血漿中で増大したことに注目。水素イオンが解離し、アシドーシス(による酸血症)がもたらされます。
乳酸性アシドーシス
糖の無気的代謝が亢進して乳酸が増大します。赤い四葉のクローバの一部が血漿中で増大したことに注目。水素イオンが解離し、アシドーシス(による酸血症)がもたらされます。
血漿中のanion gapが増加しない代謝性アシドーシス
anion gapが増加しない、すなわち、「糸球体からろ過される不揮発性酸」が増大しない代謝性アシドーシスであり、ふたつの病態が考えられます。
1.HCO3-(重炭酸イオン)が喪失される病態
このとき、「糸球体からろ過される不揮発性酸」が増大しているわけではないので、HCO3-の喪失分、Cl-が増加します。そのため、anion gapは増加しません。高Cl-性代謝性アシドーシスとよばれることもあります。H++HCO3-←→H2O+CO2の平衡式は左に移動(H++HCO3-←H2O+CO2)するため、H+が増加し、代謝性アシドーシスになるわけです。
変化前 | H+ | + | HCO3- | ←→ | H2O | + | CO2 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
最初に起こる変化 | ↓↓↓ | ||||||
最初の変化に近い平衡式の作用 | ↑↑ | ↑↑ | |||||
最初の変化から遠い平衡式の作用 | ← | ↓ | ↓ | ||||
総和 | ↑↑ | ↓ | ←→ | ↓ | ↓ |
主なものには下記の2つがあります。
下痢
大量に失われる電解質の中にHCO3-が含まれています。そのために、血漿中のHCO3-が減少し、重炭酸緩衝系の平衡がH++HCO3-←H2O+CO2の方向に化学反応が進行し、アシドーシス(による酸血症)がもたらされます。増大したH+の一部は「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合し、緩衝されます。ただし、「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合している水素(H)が増大しても「糸球体からろ過される不揮発性酸」(赤い四葉のクローバ)自体が増大するわけではないので、anion gapは増大しません。
尿細管障害によるアシドーシス(renal tubular acidosis, RTA)の2型(近位型)
HCO3-の再吸収が障害されるため、血漿中のHCO3-が減少し、重炭酸緩衝系の平衡がH++HCO3-←H2O+CO2の方向に化学反応が進行し、アシドーシス(による酸血症)がもたらされます。増大したH+の一部は「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合し、緩衝されます。ただし、「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合している水素(H)が増大しても「糸球体からろ過される不揮発性酸」(赤い四葉のクローバ)自体が増大するわけではないので、anion gapは増大しません。
2.水素イオン自体の排泄障害
尿細管における水素イオンの分泌が障害された場合、当然、代謝性アシドーシスとなります。この際、HCO3-は消費されます。増大したH+の一部は「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合し、緩衝されます。ただし、「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合している水素(H)が増大しても「糸球体からろ過される不揮発性酸」(赤い四葉のクローバ)自体が増大するわけではないので、anion gapは増大しません。
変化前 | H+ | + | HCO3- | ←→ | H2O | + | CO2 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
最初に起こる変化 | ↑↑↑ | ||||||
最初の変化に近い平衡式の作用 | ↓↓ | ↓↓ | |||||
最初の変化から遠い平衡式の作用 | → | ↑ | ↑ | ||||
総和 | ↑ | ↓↓ | ←→ | ↑ | ↑ |
主なものには下記の2つがあります。
低アルドステロン症
アルドステロンの不足により、尿細管におけるNa+ポンプが充分に機能せず、交換で排泄されるべき、H+が血漿中に増大します。
尿細管障害によるアシドーシス(renal tubular acidosis, RTA)の1型(遠位型)
H+の分泌が障害されるためです。
Challenge Quiz
一般的な(糸球体の障害が主病態である)腎不全によるアシドーシスではanion gapは増大 する しない 。
糖尿病によるケトアシドーシスではanion gapは増大 する しない 。
乳酸性アシドーシスではanion gapは増大 する しない 。
激しい下痢によるアシドーシスではanion gapは増大 する しない 。
低アルドステロン症によるアシドーシスではanion gapは増大 する しない 。
糸球体の障害(一般的な腎不全)が発生した場合、主として、 「糸球体からろ過される不揮発性酸」のろ過 「尿細管から分泌される不揮発性酸」その1、HCO3-の再吸収によるH+の排出 「尿細管から分泌される不揮発性酸」その2、水素イオンの分泌 が障害される。この場合、 呼吸性 代謝性 アルカローシス アシドーシス に陥る。また.anion gapは増大 する しない 。また、血漿中の重要なアルカリ性物質である重炭酸イオン( HCO3-)は減少 する しない 。
尿細管障害の1型(遠位型)が発生した場合、主として、 「糸球体からろ過される不揮発性酸」のろ過 「尿細管から分泌される不揮発性酸」その1、HCO3-の再吸収によるH+の排出 「尿細管から分泌される不揮発性酸」その2、水素イオンの分泌 が障害される。この場合、 呼吸性 代謝性 アルカローシス アシドーシス に陥る。また、anion gapは増大 する しない 。また、血漿中の重要なアルカリ性物質である重炭酸イオン( HCO3-)は減少 する しない 。
尿細管障害の2型(近位型)が発生した場合、主として、 「糸球体からろ過される不揮発性酸」のろ過 「尿細管から分泌される不揮発性酸」その1、HCO3-の再吸収によるH+の排出 「尿細管から分泌される不揮発性酸」その2、水素イオンの分泌 が障害される。この場合、 呼吸性 代謝性 アルカローシス アシドーシス に陥る。また、anion gapは増大 する しない 。また、血漿中の重要なアルカリ性物質である重炭酸イオン( HCO3-)は減少 する しない 。