「電解質と体液/腎臓と肺、それぞれの機能低下と機能亢進/データの読み方/第2歩/データの読み方/第2歩(中級編)/代謝性アルカローシス」の版間の差分
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最初の病態として、嘔吐を発症し酸が排出され、体外に放出された場合を考えて見ましょう。 | |||
あるいは、腎機能が亢進した場合を考えてみましょう。酸の排出が増加します。これらにより、血中の水素イオン (H<sup>+</sup>)が減少します。 | |||
重炭酸緩衝系のバランスが乱されたので、「最初に起こったことを打ち消す方向」、つまりこの場合は左方向に反応が進みます。これにより水素イオン (H<sup>+</sup>)が生成されるからです。左向き反応で生成されるため重炭酸イオン(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)も増大し、左向き反応で消費されるため二酸化炭素(CO<sub>2</sub>) が減少します。 | |||
「最初に起こったことが完全に打ち消されるわけではない」のですから、水素イオン (H<sup>+</sup>)が4減少すると、重炭酸緩衝系の作用により生成される水素イオン (H<sup>+</sup>)は、それよりも少ないので、2としましょう。重炭酸イオン(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)は2生成され増加し、二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)は2消費され減少します。 | |||
最初の変化と重炭酸緩衝系の作用までをまとめると、このような新たな平衡が成り立ちます。 | |||
[[ファイル:pH-HCO3-metabolic-alkalosis.jpg|left|350px]]pHを横軸、重炭酸イオン(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)を縦軸とするグラフにおいて、水素イオン(H<sup>+</sup>)が減少することはpHが上昇するので右方移動となります。重炭酸イオン(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)が増大することは上方移動となり、この状態はこのようにプロットされます。<br style="clear:both;" /> | |||
たとえば、pH, 7.48 ; HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>, 32.3 mEq/L ; CO<sub>2</sub>, 46 mm | たとえば、pH, 7.48 ; HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>, 32.3 mEq/L ; CO<sub>2</sub>, 46 mm Hgの血液検査データでは、正常値よりも水素イオン濃度が減少し、重炭酸イオンは増大しています。これは、血漿における重炭酸緩衝系の化学平衡式H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>←→ H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>において、左端にあるH<sup>+</sup>とHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>とが逆の方向に変動しており、血漿に最初に起こった変化はH<sup>+</sup>の減少と考えると説明がつきます。(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が増大する病態はあまり知られていない)。これは、腎臓機能亢進によってもたらされたと思われます。さらに、重炭酸緩衝系はH<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>← H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>の方向に化学変化が生じたと考えられます。pHの変動は代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症)とよばれます。 | ||
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<table border="1"><tr><th>pHの変動</th><th>H<sup>+</sup>の変動</th><th>HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>の変動</th><th>最初に起った変化</th><th>重炭酸緩衝系の動き</th><th>診断される病態</th></tr><tr><td>増大</td><td>減少</td><td>増大</td><td>H<sup>+</sup>の減少</td><td>H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>← H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub></td><td>代謝性アルカローシス</td></tr></table> | |||
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H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> ←→ H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub> において、アルドステロン症(腎臓の機能亢進)そのものにより(重炭酸緩衝系の作用なしに)最初に起こる変化は {~呼吸性アシドーシス(による酸血症)~代謝性アシドーシス(による酸血症)~呼吸性アルカローシス(によるアルカリ血症)~=代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症)~高CO<sub>2</sub>血症~低CO<sub>2</sub>血症} である。重炭酸緩衝系はこの変化に対して、{=H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> ← H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> → H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>}方向に反応が進行する。これにより、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>は {=増大~減少}する。 | |||
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H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> ←→ H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub> において、アルドステロン症(腎臓の機能亢進)そのものにより(重炭酸緩衝系の作用なしに)最初に起こる変化は {~呼吸性アシドーシス(による酸血症)~代謝性アシドーシス(による酸血症)~呼吸性アルカローシス(によるアルカリ血症)~=代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症)~高CO<sub>2</sub>血症~低CO<sub>2</sub>血症} である。重炭酸緩衝系はこの変化に対して、{=H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> ← H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> → H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>}方向に反応が進行する。これにより、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>は {=増大~減少}する。 | |||
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動脈血のpH, 7.48 (正常値:7.4); HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>, 32.3 (正常値:24) mEq/L ; CO<sub>2</sub>, 46 (正常値:40) mm Hgの血液検査データでは、正常値よりも水素イオン濃度が {~増大~=減少}し、重炭酸イオンは {=増大~減少}している。これは、血漿における重炭酸緩衝系の化学平衡式H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> ←→ H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>において、左端にあるH<sup>+</sup>とHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>とが {~同じ~=異なる}方向に変動しており、血漿に最初に起こった変化はH<sup>+</sup>の変動であると {=思われる~思われない}。血漿に最初に起こった変化は {=H<sup>+</sup>~CO<sub>2</sub>}の {~増大~=減少}と考えると説明がつく。 | |||
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動脈血のpH, 7.48 (正常値:7.4); HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>, 32.3 (正常値:24) mEq/L ; CO<sub>2</sub>, 46 (正常値:40) mm Hgの血液検査データでは、正常値よりも水素イオン濃度が {~増大~=減少}し、重炭酸イオンは {=増大~減少}している。これは、血漿における重炭酸緩衝系の化学平衡式H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> ←→ H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>において、左端にあるH<sup>+</sup>とHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>とが {~同じ~=異なる}方向に変動しており、血漿に最初に起こった変化はH<sup>+</sup>の変動であると {=思われる~思われない}。血漿に最初に起こった変化は {=H<sup>+</sup>~CO<sub>2</sub>}の {~増大~=減少}と考えると説明がつく。 | |||
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動脈血のpH, 7.48 (正常値:7.4); HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>, 32.3 (正常値:24) mEq/L ; CO<sub>2</sub>, 46 (正常値:40) mm Hgの血液検査データでは、{~肺~=腎臓}の機能 {=亢進~不全}によってもたらされたと思われる。さらに、重炭酸緩衝系は {=H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> ← H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> → H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>}の方向に化学変化が生じたと考えられる。pHの変動は {=代謝性~呼吸性} {~アシドーシス(による酸血症)~=アルカローシス(によるアルカリ血症)}とよばれる。 | |||
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動脈血のpH.7. | 動脈血のpH, 7.48 (正常値:7.4); HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>, 32.3 (正常値:24) mEq/L ; CO<sub>2</sub>, 46 (正常値:40) mm Hgの血液検査データでは、{~肺~=腎臓}の機能 {=亢進~不全}によってもたらされたと思われる。さらに、重炭酸緩衝系は {=H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> ← H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> → H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>}の方向に化学変化が生じたと考えられる。pHの変動は {=代謝性~呼吸性} {~アシドーシス(による酸血症)~=アルカローシス(によるアルカリ血症)}とよばれる。 | ||
[[画像:BicorboBasicnateBufferStep2DataSummary-Jpn.jpg|590px]] | |||
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2024年6月20日 (木) 15:52時点における最新版
H+の減少とHCO3-の増大とは代謝性アルカローシスを示唆する。 |
最初の病態として、嘔吐を発症し酸が排出され、体外に放出された場合を考えて見ましょう。 あるいは、腎機能が亢進した場合を考えてみましょう。酸の排出が増加します。これらにより、血中の水素イオン (H+)が減少します。
重炭酸緩衝系のバランスが乱されたので、「最初に起こったことを打ち消す方向」、つまりこの場合は左方向に反応が進みます。これにより水素イオン (H+)が生成されるからです。左向き反応で生成されるため重炭酸イオン(HCO3-)も増大し、左向き反応で消費されるため二酸化炭素(CO2) が減少します。
「最初に起こったことが完全に打ち消されるわけではない」のですから、水素イオン (H+)が4減少すると、重炭酸緩衝系の作用により生成される水素イオン (H+)は、それよりも少ないので、2としましょう。重炭酸イオン(HCO3-)は2生成され増加し、二酸化炭素(CO2)は2消費され減少します。
最初の変化と重炭酸緩衝系の作用までをまとめると、このような新たな平衡が成り立ちます。
pHを横軸、重炭酸イオン(HCO3-)を縦軸とするグラフにおいて、水素イオン(H+)が減少することはpHが上昇するので右方移動となります。重炭酸イオン(HCO3-)が増大することは上方移動となり、この状態はこのようにプロットされます。
たとえば、pH, 7.48 ; HCO3-, 32.3 mEq/L ; CO2, 46 mm Hgの血液検査データでは、正常値よりも水素イオン濃度が減少し、重炭酸イオンは増大しています。これは、血漿における重炭酸緩衝系の化学平衡式H+ + HCO3-←→ H2O + CO2において、左端にあるH+とHCO3-とが逆の方向に変動しており、血漿に最初に起こった変化はH+の減少と考えると説明がつきます。(HCO3-が増大する病態はあまり知られていない)。これは、腎臓機能亢進によってもたらされたと思われます。さらに、重炭酸緩衝系はH+ + HCO3-← H2O + CO2の方向に化学変化が生じたと考えられます。pHの変動は代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症)とよばれます。
pHの変動 | H+の変動 | HCO3-の変動 | 最初に起った変化 | 重炭酸緩衝系の動き | 診断される病態 |
---|---|---|---|---|---|
増大 | 減少 | 増大 | H+の減少 | H+ + HCO3-← H2O + CO2 | 代謝性アルカローシス |
Challenge Quiz
H+ + HCO3- ←→ H2O + CO2 において、アルドステロン症(腎臓の機能亢進)そのものにより(重炭酸緩衝系の作用なしに)最初に起こる変化は 呼吸性アシドーシス(による酸血症) 代謝性アシドーシス(による酸血症) 呼吸性アルカローシス(によるアルカリ血症) 代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症) 高CO2血症 低CO2血症 である。重炭酸緩衝系はこの変化に対して、 H+ + HCO3- ← H2O + CO2 H+ + HCO3- → H2O + CO2 方向に反応が進行する。これにより、HCO3-は 増大 減少 する。
H+ + HCO3- ←→ H2O + CO2 において、アルドステロン症(腎臓の機能亢進)そのものにより(重炭酸緩衝系の作用なしに)最初に起こる変化は 呼吸性アシドーシス(による酸血症) 代謝性アシドーシス(による酸血症) 呼吸性アルカローシス(によるアルカリ血症) 代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症) 高CO2血症 低CO2血症 である。重炭酸緩衝系はこの変化に対して、 H+ + HCO3- ← H2O + CO2 H+ + HCO3- → H2O + CO2 方向に反応が進行する。これにより、HCO3-は 増大 減少 する。
動脈血のpH, 7.48 (正常値:7.4); HCO3-, 32.3 (正常値:24) mEq/L ; CO2, 46 (正常値:40) mm Hgの血液検査データでは、正常値よりも水素イオン濃度が 増大 減少 し、重炭酸イオンは 増大 減少 している。これは、血漿における重炭酸緩衝系の化学平衡式H+ + HCO3- ←→ H2O + CO2において、左端にあるH+とHCO3-とが 同じ 異なる 方向に変動しており、血漿に最初に起こった変化はH+の変動であると 思われる 思われない 。血漿に最初に起こった変化は H+ CO2 の 増大 減少 と考えると説明がつく。
動脈血のpH, 7.48 (正常値:7.4); HCO3-, 32.3 (正常値:24) mEq/L ; CO2, 46 (正常値:40) mm Hgの血液検査データでは、正常値よりも水素イオン濃度が 増大 減少 し、重炭酸イオンは 増大 減少 している。これは、血漿における重炭酸緩衝系の化学平衡式H+ + HCO3- ←→ H2O + CO2において、左端にあるH+とHCO3-とが 同じ 異なる 方向に変動しており、血漿に最初に起こった変化はH+の変動であると 思われる 思われない 。血漿に最初に起こった変化は H+ CO2 の 増大 減少 と考えると説明がつく。
動脈血のpH, 7.48 (正常値:7.4); HCO3-, 32.3 (正常値:24) mEq/L ; CO2, 46 (正常値:40) mm Hgの血液検査データでは、 肺 腎臓 の機能 亢進 不全 によってもたらされたと思われる。さらに、重炭酸緩衝系は H+ + HCO3- ← H2O + CO2 H+ + HCO3- → H2O + CO2 の方向に化学変化が生じたと考えられる。pHの変動は 代謝性 呼吸性 アシドーシス(による酸血症) アルカローシス(によるアルカリ血症) とよばれる。
動脈血のpH, 7.48 (正常値:7.4); HCO3-, 32.3 (正常値:24) mEq/L ; CO2, 46 (正常値:40) mm Hgの血液検査データでは、 肺 腎臓 の機能 亢進 不全 によってもたらされたと思われる。さらに、重炭酸緩衝系は H+ + HCO3- ← H2O + CO2 H+ + HCO3- → H2O + CO2 の方向に化学変化が生じたと考えられる。pHの変動は 代謝性 呼吸性 アシドーシス(による酸血症) アルカローシス(によるアルカリ血症) とよばれる。