「電解質と体液/pH調節関連の用語定義/重炭酸緩衝系と肺とによるpH調節」の版間の差分

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<strong>Henderson-Hasselbalchの式</strong>
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重炭酸緩衝系の平衡式(H<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>&larr;&rarr;H<sub>2</sub>O+CO<sub>2</sub>)から、


重炭酸緩衝系の平衡式(H<sup>+</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>&larr;&rarr;H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>&larr;&rarr;H<sub>2</sub>O+CO<sub>2</sub>)から,
pH=6.1+log (HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度/CO<sub>2</sub>濃度)


が導かれます。すなわち、血漿のpHは重炭酸イオン(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)濃度(mEq/L)のCO<sub>2</sub>濃度(mEq/L)に対する比で決まります。また、CO<sub>2</sub>濃度(mEq/L)はCO<sub>2</sub>分圧(mm Hg)&times;0.03(分圧をモル濃度に変換する溶解係数)と等しいので、上式は


<strong>pH=6.1+log (HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>)</strong>
pH=6.1+log(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度/CO<sub>2</sub>分圧&times;0.03)


   =7.62+log(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度/CO<sub>2</sub>分圧)


が導かれます.すなわち,血しょうのpHは重炭酸イオン(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)の重炭酸(H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>)に対する比で決まります.また,H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>の濃度(mEq/L)はCO<sub>2</sub>濃度(mm Hg)&times;0.03と等しいので,上式は
とも記載できます。


<strong>Henderson-Hasselbalchの式の意義</strong>


<strong>pH=6.1+log(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/CO<sub>2</sub>&times;0.03)
血漿のpHは重炭酸イオン(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)濃度のCO<sub>2</sub>濃度(分圧)に対する比で決まる。とのことは、平衡式をみるだけで理解できることです。しかし、Henderson-Hasselbalchの式により、実際の数値を代入することが可能です。運動などで数値がどのように変化するかを検討することにより、平衡式の理解が深まると思われます。


  =7.62+log(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/CO<sub>2</sub>) </strong>
<table align="left" border="1"><tr><th rowspan="2"> </th><th>安静時</th><th>運動時</th></tr><tr><th>動脈血</th><th>動脈血</th></tr><tr><th>乳酸濃度(mEq/L)</th><td>1</td><td>5</td></tr><tr><th>HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度(mEq/L)</th><td>24</td><td>20</td></tr><tr><th>CO<sub>2</sub>分圧(mm Hg)</th><td>40</td><td>35</td></tr><tr><th>HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/CO<sub>2</sub>比</th><td>0.6</td><td>0.571</td></tr><tr><th>log(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/CO<sub>2</sub>)</th><td>-0.22</td><td>-0.24</td></tr><tr><th>pH</th><td>7.40</td><td>7.38</td></tr><tr><th>H<sup>+</sup>濃度(nEq/L)</th><td>40</td><td>42</td></tr></table>
 
 
とも記載できます.
 
 
{{TitleSmall|式の意義}}
 
血しょうのpHは重炭酸イオン(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)濃度のCO<sub>2</sub>濃度に対する比で決まる,とのことは,平衡式をみるだけで理解できることです.しかし,Henderson-Hasselbalchの式により,実際の数値を代入することが可能です.運動などで数値がどのように変化するかを検討することにより,平衡式の理解が深まるであろう.
 
 
<table align="left" border="1"><tr><th rowspan="2"> </th><th>安静時</th><th>運動時</th></tr><tr><th>動脈血</th><th>動脈血</th></tr><tr><th>乳酸濃度(mEq/L)</th><td>1</td><td>5</td></tr><tr><th>HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度(mEq/L)</th><td>24</td><td>20</td></tr><tr><th>CO<sub>2</sub>濃度(mm Hg)</th><td>40</td><td>34</td></tr><tr><th>HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/CO<sub>2</sub>比</th><td>0.6</td><td>0.588</td></tr><tr><th>log(HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/CO<sub>2</sub>)</th><td>-0.22</td><td>-0.23</td></tr><tr><th>pH</th><td>7.40</td><td>7.39</td></tr><tr><th>H<sup>+</sup>濃度(nEq/L)</th><td>40</td><td>41</td></tr></table>
 
 
Doll E, et al. (Am. J. Physiol. 215:23-29, 1968)のデータを参照した.14名の健康な平均年齢24才の男性におけるデータです.運動は自転車エルゴメータで50Wで6分間,つづいて100Wで6分間,つづいて150Wで6分間運動したときのデータです.




Doll E, et al. (Am. J. Physiol. 215:23-29, 1968)のデータを参照。14名の健康な平均年齢24才の男性におけるデータです。自転車エルゴメータで50Wで6分間、つづいて100Wで6分間、つづいて150Wで6分間運動したときのデータです。
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気づいていただきたい点は...  
気づいていただきたい点は...  
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<ul>
<ul>
<li>pHを決定するH<sup>+</sup>濃度の単位がnano (10<sup>-9</sup>)であり,乳酸濃度などの単位milli (10<sup>-3</sup>)と比較すると100万分の1である. </li>
<li>pHを決定するH<sup>+</sup>濃度の単位がnano (10<sup>-9</sup>)であり、乳酸濃度などの単位milli (10<sup>-3</sup>)と比較すると100万分の1である。 </li>
<li>はげしい運動の筋肉運動により乳酸濃度が増大すると,HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が消費(安静時,24mEq/L;運動時,20mEq/L)される.しかし,換気の亢進のため,動脈血中CO<sub>2</sub>濃度が減少(安静時,40mmHg;運動時,34mmHg)し,HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/CO<sub>2</sub>比は,安静時と比べて,あまり減少しない.結局,H<sup>+</sup>濃度もpHもあまり減少しない. </li>
<li>激しい運動の筋肉運動により乳酸濃度が増大すると、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が消費(安静時、24 mEq/L:運動時、20 mEq/L)される。しかし、換気の亢進のため、動脈血中CO<sub>2</sub>濃度が減少(安静時、40 mmHg:運動時、35 mmHg)し、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/CO<sub>2</sub>比は、安静時と比べて、あまり減少しない。結局、H<sup>+</sup>濃度はあまり上昇せず、pHもあまり減少しない。 </li>
<li>運動による乳酸濃度の増加は生存可能なH<sup>+</sup>濃度範囲(20-100nEq/L, pH:7.7-7.0)と比べて桁違い(1-&gt;5 mEq/L)に大きい.ビーカに5 mEq/Lの乳酸のみの溶液があると,そのpHは約3.5になる.この大量の酸性物質にもかかわらず,pHの変動が極小なのが上記の理由による.なお,HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が消費(安静時,24mEq/L;運動時,20mEq/L)されるだけで,CO<sub>2</sub>濃度が減少しなかったら,HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>/CO<sub>2</sub>比は,0.6から0.5に減少してしまい,pHも7.32まで低下する. </li>
<li>運動による乳酸濃度の増加は生存可能なH<sup>+</sup>濃度範囲(20-100 nEq/L、 pH:7.7-7.0)と比べて桁違い(1-&gt;5 mEq/L)に大きい。ビーカに5 mEq/Lの乳酸のみの溶液があると、そのpHは約3.5になる。この大量の酸性物質にもかかわらず、pHの変動が極小なのが上記の理由による。なお,HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が消費(安静時、24 mEq/L:運動時、20 mEq/L)されるだけで、CO<sub>2</sub>濃度が減少しなかったら、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度/CO<sub>2</sub>分圧比は、0.6から0.5に減少してしまい、pHも7.32まで低下する。 </li>
</ul>
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{{QuizTitle}}
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<GIFT>
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::チャレンジクイズ::
//LEVEL:3  
//LEVEL:3  
//RAND  
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安静時.動脈血に比べて静脈血のpHは {=低い~同等である~高い}.これは.筋肉など各臓器が {~乳酸~リン酸~=CO<sub>2</sub>~重炭酸~重炭酸イオン}を放出し.肺での排出のために動静脈間で濃度差があり.重炭酸緩衝系はこれに対して静脈内で {=H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &larr; H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub> &larr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &rarr; H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub> &rarr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>} 方向へ作用しているためである.
運動により筋から乳酸が血中に放出された。血漿緩衝系がなければ、乳酸が遊離するH<sup>+</sup>はpHを {~上昇~=低下}させてしまう。しかし、血漿緩衝系、特に、重炭酸緩衝系の重炭酸イオンは {~酸性~=アルカリ性}物質であり、H<sup>+</sup>と結合することで、運動時のH<sup>+</sup>の {=増大~減少}を緩衝する。この際、重炭酸緩衝系は {~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &larr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~=H<sup>+</sup> +HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &rarr; H<sub>2</sub>O +CO<sub>2</sub>}の方向に作用し、重炭酸イオンは {=減少~増大}する。さらに、運動時、換気が亢進することにより動脈血CO<sub>2</sub>濃度が {=減少~増大}し、この変化も(は)重炭酸緩衝系を {~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &larr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~=H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &rarr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>}の方向に作用させ、重炭酸イオンの緩衝作用を {=助長~阻害}する。
 


//LEVEL:3
//LEVEL:4
//RAND  
//RAND  
運動により筋から乳酸が血中に放出された。血漿緩衝系がなければ、乳酸が遊離するH<sup>+</sup>はpHを {~上昇~=低下}させてしまう。しかし、血漿緩衝系、特に、重炭酸緩衝系の重炭酸イオンは {~酸性~=アルカリ性}物質であり、H<sup>+</sup>と結合することで、運動時のH<sup>+</sup>の {=増大~減少}を緩衝する。この際、重炭酸緩衝系は {~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &larr; H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub> &larr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~=H<sup>+</sup> +HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &rarr; H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub> &rarr; H<sub>2</sub>O +CO<sub>2</sub>}の方向に作用し、重炭酸イオンは {=減少~増大}する。さらに、運動時、換気が亢進することにより動脈血CO<sub>2</sub>濃度が {=減少~増大}し、この変化も(は)重炭酸緩衝系を {~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &larr; H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub> &larr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~=H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &rarr; H<sub>2</sub>CO<sub>3</sub> &rarr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>}の方向に作用させ、重炭酸イオンの緩衝作用を {=助長~阻害}する。
安静時、動脈血に比べて静脈血のpHは {=低い~同等である~高い}。これは、筋肉など各臓器が {~乳酸~リン酸~=CO<sub>2</sub>~重炭酸~重炭酸イオン}を放出し、肺での排出のために動静脈間で濃度差があり、重炭酸緩衝系はこれに対して静脈内で {=H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &larr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>~H<sup>+</sup> + HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> &rarr; H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>} 方向へ作用しているためである。
</GIFT>
</GIFT>

2020年9月24日 (木) 16:33時点における最新版

Henderson-Hasselbalchの式

重炭酸緩衝系の平衡式(H++HCO3-←→H2O+CO2)から、

pH=6.1+log (HCO3-濃度/CO2濃度)

が導かれます。すなわち、血漿のpHは重炭酸イオン(HCO3-)濃度(mEq/L)のCO2濃度(mEq/L)に対する比で決まります。また、CO2濃度(mEq/L)はCO2分圧(mm Hg)×0.03(分圧をモル濃度に変換する溶解係数)と等しいので、上式は

pH=6.1+log(HCO3-濃度/CO2分圧×0.03)

  =7.62+log(HCO3-濃度/CO2分圧)

とも記載できます。

Henderson-Hasselbalchの式の意義

血漿のpHは重炭酸イオン(HCO3-)濃度のCO2濃度(分圧)に対する比で決まる。とのことは、平衡式をみるだけで理解できることです。しかし、Henderson-Hasselbalchの式により、実際の数値を代入することが可能です。運動などで数値がどのように変化するかを検討することにより、平衡式の理解が深まると思われます。

 安静時運動時
動脈血動脈血
乳酸濃度(mEq/L)15
HCO3-濃度(mEq/L)2420
CO2分圧(mm Hg)4035
HCO3-/CO20.60.571
log(HCO3-/CO2)-0.22-0.24
pH7.407.38
H+濃度(nEq/L)4042


Doll E, et al. (Am. J. Physiol. 215:23-29, 1968)のデータを参照。14名の健康な平均年齢24才の男性におけるデータです。自転車エルゴメータで50Wで6分間、つづいて100Wで6分間、つづいて150Wで6分間運動したときのデータです。

気づいていただきたい点は...

  • pHを決定するH+濃度の単位がnano (10-9)であり、乳酸濃度などの単位milli (10-3)と比較すると100万分の1である。
  • 激しい運動の筋肉運動により乳酸濃度が増大すると、HCO3-が消費(安静時、24 mEq/L:運動時、20 mEq/L)される。しかし、換気の亢進のため、動脈血中CO2濃度が減少(安静時、40 mmHg:運動時、35 mmHg)し、HCO3-/CO2比は、安静時と比べて、あまり減少しない。結局、H+濃度はあまり上昇せず、pHもあまり減少しない。
  • 運動による乳酸濃度の増加は生存可能なH+濃度範囲(20-100 nEq/L、 pH:7.7-7.0)と比べて桁違い(1->5 mEq/L)に大きい。ビーカに5 mEq/Lの乳酸のみの溶液があると、そのpHは約3.5になる。この大量の酸性物質にもかかわらず、pHの変動が極小なのが上記の理由による。なお,HCO3-が消費(安静時、24 mEq/L:運動時、20 mEq/L)されるだけで、CO2濃度が減少しなかったら、HCO3-濃度/CO2分圧比は、0.6から0.5に減少してしまい、pHも7.32まで低下する。


Challenge Quiz

1.

運動により筋から乳酸が血中に放出された。血漿緩衝系がなければ、乳酸が遊離するH+はpHを  上昇 低下 させてしまう。しかし、血漿緩衝系、特に、重炭酸緩衝系の重炭酸イオンは  酸性 アルカリ性 物質であり、H+と結合することで、運動時のH+の  増大 減少 を緩衝する。この際、重炭酸緩衝系は  H+ + HCO3- ← H2O + CO2 H+ +HCO3- → H2O +CO2 の方向に作用し、重炭酸イオンは  減少 増大 する。さらに、運動時、換気が亢進することにより動脈血CO2濃度が  減少 増大 し、この変化も(は)重炭酸緩衝系を  H+ + HCO3- ← H2O + CO2 H+ + HCO3- → H2O + CO2 の方向に作用させ、重炭酸イオンの緩衝作用を  助長 阻害 する。

2.

安静時、動脈血に比べて静脈血のpHは  低い 同等である 高い 。これは、筋肉など各臓器が  乳酸 リン酸 CO2 重炭酸 重炭酸イオン を放出し、肺での排出のために動静脈間で濃度差があり、重炭酸緩衝系はこれに対して静脈内で  H+ + HCO3- ← H2O + CO2 H+ + HCO3- → H2O + CO2 方向へ作用しているためである。