POINT!

三大栄養素は、糖、脂質、タンパク質であり、それぞれ、炭素原子(C)、酸素原子(O)、水素原子(H)などの構成割合が異なります。そのため、内呼吸のとき、どの栄養素が分解しているかにより、消費されるO2と排出されるCO2の割合が異なります。それを表現したのが、呼吸商です。

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嫌気的代謝と好気的代謝が行われると、栄養素は、二酸化炭素と水とに分解されます。 そのため、栄養素内の炭素原子と同じ数の二酸化炭素が生成します。また、栄養素内の水素原子の半分の数の水が生成します。

栄養素内の炭素原子1個と栄養素内の酸素原子2個とが結合して、二酸化炭素を生成し、個体外へ呼気中に排出します。 また、栄養素内の水素原子2個と栄養素内の酸素原子1個とが結合して、水を生成し、個体外へ排出することもあります。 栄養素内の酸素原子だけでは足りないので、栄養素内の炭素原子1個と吸気中の酸素原子2個とが結合して、二酸化炭素を生成し、個体外へ呼気中に排出します。 また、栄養素内の水素原子2個と吸気中の酸素原子1個とが結合して、水を生成し、個体外へ排出することもあります。

ブドウ糖にもヘキサン酸にも炭素原子は6個あるので、代謝されると二酸化炭素は6個生成します。そのために必要な酸素原子は12個です。
ブドウ糖にもヘキサン酸にも水素原子は12個あるので、代謝されると水は6個生成します。そのために必要な酸素原子は6個です。
ブドウ糖でもヘキサン酸でも、代謝において二酸化炭素のために12個、水のために6個、合わせて18個の酸素原子が必要です。
ブドウ糖でもヘキサン酸でも、栄養素内には酸素原子が18個もないので、空気を吸ってその中の酸素原子を使わなくてはなりません。
ブドウ糖内には酸素原子が6個あるので、吸気中の酸素原子は12個使わなくてはなりません。
ヘキサン酸内には酸素原子が2個しかないので、吸気中の酸素原子は16個も使わなくてはなりません。

呼吸商は呼気に出した二酸化炭素排泄量割る吸気中の酸素分子(O2)消費量です。
ブドウ糖など糖質は呼気中の二酸化炭素排泄量が6で吸気中の酸素分子(O2)消費量が6であるため呼吸商は1になります。
また、ヘキサン酸など脂質は呼気中の二酸化炭素排泄量が6で吸気中の酸素分子(O2)消費量が8であるため呼吸商は0.75になります。

まとめると、
糖質では、脂質に比べて、栄養素内の酸素が多いので、消費する吸気中の酸素が少ないのです。吸気中の酸素消費量は分母であり、糖質では脂質より分母が小さいので呼吸商は大きいのです。
逆に脂質では、糖質に比べて、栄養素内の酸素が少ないので、消費する吸気中の酸素が多いのです。吸気中の酸素消費量は分母であり、脂質では糖質より分母が大きいので呼吸商は小さいのです。

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糖類: 一般的に、原子の割合はC6H1206です。酸素原子が多く含まれているため、酸素消費量は少なくても分解できます。呼吸商は、1.00と三大栄養素の中では最大です。逆に、酸素の含有が高いので、重量あたりの熱量は、4.1kcal/gと三大栄養素中最小です。


脂質: 脂肪酸の構造を考えてみると、炭素原子(C)の鎖のようなものです。脂肪酸自体の中に酸素原子が少ないため、分解するときは多くの酸素を消費しなければなりません。O2消費量の割には、CO2排出量が少ないため、例えばヘキサン酸の呼吸商は、0.75とブドウ糖よりも少ないです。脂肪は、酸素の含有率が低いので、重量あたりの熱量は、9.3kcal/gと三大栄養素中最大です。エネルギーを保存する場合に適した栄養素であり、過食により皮下に貯蔵されるのも脂質です。

タンパク質: 原子の割合は脂質と糖質の中間であり、呼吸商は、0.85、熱量は、5.3kcal/gです。

摂取した後のエネルギー量は、吸収効率も勘案し、糖質:4 kcal/g、たんぱく質:4 kcal/g、脂質:9 kcal/gです。

Challenge Quiz

1.

生体のCO2排泄量のO2摂取量に対する比を  呼吸商 換気量 という。

2.

呼吸商とは、 O2摂取量のCO2排泄量に対する比 CO2排泄量のO2摂取量に対する比 である。

3.

呼吸商は、その時消費されている栄養素の  種類 が示唆される。

4.

(含有する炭素原子が同数の場合)糖質と脂質とでは、脂質の方が含有する酸素原子は  少ない 多い

5.

ぶどう糖と脂質とでは、脂質の方が呼吸商は  大きい 小さい

6.

ブドウ糖の呼吸商は、約 0.7 1.0 である。

7.

脂質の呼吸商は、約 0.7 1.0 である。