H+の減少とHCO3-の増大とは代謝性アルカローシスを示唆する。 |
最初の病態として、嘔吐を発症し酸が排出され、体外に放出された場合を考えて見ましょう。 あるいは、腎機能が亢進した場合を考えてみましょう。酸の排出が増加します。これらにより、血中の水素イオン (H+)が減少します。
重炭酸緩衝系のバランスが乱されたので、「最初に起こったことを打ち消す方向」、つまりこの場合は左方向に反応が進みます。これにより水素イオン (H+)が生成されるからです。左向き反応で生成されるため重炭酸イオン(HCO3-)も増大し、左向き反応で消費されるため二酸化炭素(CO2) が減少します。
「最初に起こったことが完全に打ち消されるわけではない」のですから、水素イオン (H+)が4減少すると、重炭酸緩衝系の作用により生成される水素イオン (H+)は、それよりも少ないので、2としましょう。重炭酸イオン(HCO3-)は2生成され増加し、二酸化炭素(CO2)は2消費され減少します。
最初の変化と重炭酸緩衝系の作用までをまとめると、このような新たな平衡が成り立ちます。
pHを横軸、重炭酸イオン(HCO3-)を縦軸とするグラフにおいて、水素イオン(H+)が減少することはpHが上昇するので右方移動となります。重炭酸イオン(HCO3-)が増大することは上方移動となり、この状態はこのようにプロットされます。
たとえば、pH, 7.48 ; HCO3-, 32.3 mEq/L ; CO2, 46 mm Hgの血液検査データでは、正常値よりも水素イオン濃度が減少し、重炭酸イオンは増大しています。これは、血漿における重炭酸緩衝系の化学平衡式H+ + HCO3-←→ H2O + CO2において、左端にあるH+とHCO3-とが逆の方向に変動しており、血漿に最初に起こった変化はH+の減少と考えると説明がつきます。(HCO3-が増大する病態はあまり知られていない)。これは、腎臓機能亢進によってもたらされたと思われます。さらに、重炭酸緩衝系はH+ + HCO3-← H2O + CO2の方向に化学変化が生じたと考えられます。pHの変動は代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症)とよばれます。
pHの変動 | H+の変動 | HCO3-の変動 | 最初に起った変化 | 重炭酸緩衝系の動き | 診断される病態 |
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増大 | 減少 | 増大 | H+の減少 | H+ + HCO3-← H2O + CO2 | 代謝性アルカローシス |