- 原疾患により血しょう中のCO2が増大し,重炭酸緩衝系(H+ + HCO3
- ← H2CO3 ← H2O + CO2方向の変換)のためにH+を増大させる病態を呼吸性アシドーシスという.
- H+が原疾患そのものにより増大する病態を代謝性アシドーシスという.
- 原疾患により血しょう中のCO2が減少し,重炭酸緩衝系(H+ + HCO3
- → H2CO3 → H2O + CO2方向の変換)のためにH+を減少させる病態を呼吸性アルカローシスという.
- H+が原疾患そのものにより減少する病態を代謝性アルカローシスという.
が前のステップのまとめであった.重炭酸緩衝系が緩衝するもの,もたらすものをまとめておこう.
注意!!
肺と腎臓の機能異常と重炭酸緩衝系の作用のみをまとめた.実際には,種々の代償が働き,血中の変化は「総和」のようにはならない.これは,第7章で勉強しよう.
| 原疾患 |
動脈血に最初に起こる変化 |
| H+ |
CO2 |
呼び方 |
| a. 肺の機能低下 |
|
↑↑ |
高CO2血症 |
| b. 腎臓の機能低下 |
↑↑ |
|
代謝性アシドーシス(による酸血症) |
| c. 肺の機能亢進 |
|
↓↓ |
低CO2血症 |
| d. 腎臓の機能亢進 |
↓↓ |
|
代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症) |
| 原疾患 | 重炭酸緩衝系の作用の結果,動脈血に2次的に起こる変化 |
|---|
| 変換の方向 | H+ | CO2 | 緩衝するもの | もたらすもの |
|---|
| a. 肺の機能低下 | H+←CO2 | ↑ | ↓ | 高CO2血症 | 呼吸性アシドーシス(による酸血症) |
|---|
| b. 腎臓の機能低下 | H+→CO2 | ↓ | ↑ | 代謝性アシドーシス(による酸血症) | 高CO2血症 |
|---|
| c. 肺の機能亢進 | H+→CO2 | ↓ | ↑ | 低CO2血症 | 呼吸性アルカローシス(によるアルカリ血症) |
|---|
| d. 腎臓の機能亢進 | H+←CO2 | ↑ | ↓ | 代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症) | 低CO2血症 |
|---|
| 原疾患 | 原疾患ならびに重炭酸緩衝系の作用の結果,総和的に動脈血に起こる変化 |
|---|
| H+ | CO2 |
|---|
| a. 肺の機能低下 | ↑ | ↑ |
|---|
| b. 腎臓の機能低下 | ↑ | ↑ |
|---|
| c. 肺の機能亢進 | ↓ | ↓ |
|---|
| d. 腎臓の機能亢進 | ↓ | ↓ |
|---|
全部をひとつの表にまとめて見よう!
| 原疾患 | 動脈血に最初に 起こる変化 | 重炭酸緩衝系の作用の結果、 動脈血に2次的に起こる変化 | 原疾患ならびに重炭酸緩衝系の作用の結果,総和的に動脈血に起こる変化 |
|---|
| H+ | CO2 | よび方 | 変換の方向 | H+ | CO2 | 緩衝するもの | もたらすもの | H+ | CO2 |
|---|
| 肺の機能低下 | | ↑↑ | 高CO2 血症 | H+←CO2 | ↑ | ↓ | 高CO2 血症 | 呼吸性アシドーシス(による酸血症) | ↑ | ↑ |
| 腎臓の機能低下 | ↑↑ | | 代謝性アシドーシス(による酸血症) | H+→CO2 | ↓ | ↑ | 代謝性アシドーシス(による酸血症) | 高CO2 血症 | ↑ | ↑ |
| 肺の機能亢進 | | ↓↓ | 低CO2 血症 | H+→CO2 | ↓ | ↑ | 低CO2 血症 | 呼吸性アルカローシス(によるアルカリ血症) | ↓ | ↓ |
| 腎臓の機能亢進 | ↓↓ | | 代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症) | H+←CO2 | ↑ | ↓ | 代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症) | 低CO2 血症 | ↓ | ↓ |
- 肺炎(肺の機能低下)そのものにより(重炭酸緩衝系の作用なしに)動脈血に最初に起こる変化は高CO2血症である.動脈血のこの変化に対し,重炭酸緩衝系はH+ + HCO3
- ← H2CO3 ← H2O + CO2の方向に作用する.「重炭酸緩衝系の緩衝力は完全ではない」ため,緩衝系により減少するCO2の量(↓)は,原疾患(肺の機能低下)により増大する量(↑↑)より小さい.そのため,総和としては,CO2もH+も増大する.すなわち,(種々の代償作用なしには)重炭酸緩衝系の作用により,高CO2血症は緩衝され,呼吸性アシドーシス(による酸血症)がもたらされる.
- 腎不全(腎の機能低下)そのものにより(重炭酸緩衝系の作用なしに)動脈血に最初に起こる変化は代謝性アシドーシス(による酸血症)(高H+血症)である.動脈血のこの変化に対し,重炭酸緩衝系はH+ + HCO3
- → H2CO3 → H2O + CO2の方向に作用する.「重炭酸緩衝系の緩衝力は完全ではない」ため,緩衝系により減少するH+の量(↓)は,原疾患(腎の機能低下)により増大する量(↑↑)より小さい.そのため,総和としては,H+もCO2も増大する.すなわち,(種々の代償作用なしには)重炭酸緩衝系の作用により,代謝性アシドーシス(による酸血症)は緩衝され,高CO2血症がもたらされる.
- 肺の機能亢進そのものにより(重炭酸緩衝系の作用なしに)動脈血に最初に起こる変化は低CO2血症である.動脈血のこの変化に対し,重炭酸緩衝系はH+ + HCO3
- → H2CO3 → H2O + CO2の方向に作用する.「重炭酸緩衝系の緩衝力は完全ではない」ため,緩衝系により増大するCO2の量(↑)は,原疾患(肺の機能亢進)により減少する量(↓↓)より小さい.そのため,総和としては,H+もCO2も減少する.すなわち,(種々の代償作用なしには)重炭酸緩衝系の作用により,低CO2血症は緩衝され,呼吸性アルカローシス(によるアルカリ血症)がもたらされる.
- 腎臓の機能亢進(アルドステロン症)そのものにより(重炭酸緩衝系の作用なしに)動脈血に最初に起こる変化は代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症)である.動脈血のこの変化に対し,重炭酸緩衝系はH+ + HCO3
- ← H2CO3 ← H2O + CO2の方向に作用する.「重炭酸緩衝系の緩衝力は完全ではない」ため,緩衝系により増大するH+の量(↑)は,原疾患(腎臓の機能亢進)により減少する量(↓↓)より小さい.そのため,総和としては,H+もCO2も減少する.すなわち,(種々の代償作用なしには)重炭酸緩衝系の作用により,代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症)は緩衝され,低CO2血症がもたらされる.
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