呼吸は非呼吸性活動の影響を受ける。 |
しばしば、「行動性調節」と呼ばれていますが、行動だけではなく心理的状態なども含まれるため、「呼吸の非呼吸性調節」と表記しました。
1.呼吸筋の非呼吸性活動
呼吸のためだけに使われる呼吸筋は少なく、腹直筋はじめ多くの呼吸筋が体幹の姿勢などに使われています。姿勢を変えようとすると、呼吸にも影響がおよぶことになるわけです。姿勢、発声、嚥下、排便、排尿、出産などの行動 behaviorが代表的です。それぞれの種類、程度、状況により呼吸筋への影響は種々であり、一概には言えません。(驚き、怒りなどの)情動、感情 emotionによっても呼吸筋は調節されます。
2.意識的な機能(随意的運動、感覚)の中枢
(「はい吸って、はいて」のような)随意的な呼吸 voluntary respirationでは、大脳皮質 cerebral cortexから呼吸筋 respiratory musclesに対して直接指令が伝えられます。この経路は内側の延髄 medulla oblongataを通ります。
1、2いずれの場合も脳幹 brainstemの不随意的呼吸中枢は一時的に抑制されます。
3.呼吸調節への非呼吸性作用
上記のように呼吸筋を呼吸以外の活動で使うのではなく、呼吸以外の活動が呼吸に影響することも多いのです。
視覚刺激、聴覚刺激で分時換気量が増加することがあります。
運動リズムとのentrainment:走る時は足の動きに呼吸を合わせることは聞いたことがあると思います。随意的に合わせるのではなく、自然に合ってくる、との報告もあります。
聴覚的リズムとのentrainment:音楽やメトロノームの音などのリズムと呼吸のリズムとが合ってくる、との報告もあります。
不快な刺激や興奮状態で過換気になるのは、イメージしやすいと思います。
外交的な人は炭酸ガス換気応答が高いのです。
不安神経症患者では呼吸ごとのばらつきが大きく、抗不安薬でばらつきが小さくなる、との報告もあります。
不安感の強い人は安静呼吸での呼吸数が速いのです。
付.随意的呼吸の心理に及ぼす影響
気持ちを落ち着かせるために深呼吸する、など随意的呼吸の心理に及ぼす影響も大テーマです。このステップでは、深呼吸による不安の軽減など多くの論文がある、との記載だけにとどめておきます。