「呼吸/呼吸商」の版間の差分

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[[Category:呼吸|コキュウ]]
{{Point|呼吸商 = 単位時間あたりのCO<sub>2</sub>排出量/単位時間あたりのO<sub>2</sub>消費量}}
酸素(O<sub>2</sub>)は肺胞から血中に取込まれ、体内の細胞に分配されます。当然のことながら、呼気のO<sub>2</sub>濃度は、吸気よりも低くなります。この濃度差と一回換気量の積が、血中に取込まれたO<sub>2</sub>の量であり、定常状態では、体細胞に供給された量でもあります。ある一回の呼吸において取りいれられたO<sub>2</sub>の量が、そのときの全体細胞のO<sub>2</sub>消費量の総和である、と考えるのは無理がありますが、一分間ほどのまとまった時間であれば、ほぼ等しいと考えてもよいでしょう。同様のことが、CO<sub>2</sub>の排出に関しても考察できます。すなわち、呼吸(換気)によるO<sub>2</sub>、CO<sub>2</sub>の出し入れを内呼吸の総和である、と考えることができるのです。


[[メディア:RQ完成.mp4|動画と音声での説明]]
三大栄養素は、糖、脂質、タンパク質であり、それぞれ、炭素原子(C)、酸素原子(O)、水素原子(H)などの構成割合が異なります。そのため、内呼吸のとき、どの栄養素が分解しているかにより、消費されるO<sub>2</sub>と排出されるCO<sub>2</sub>の割合が異なります。それを表現したのが、呼吸商です。
[[ファイル:respiratory quotient.jpg|none|671px]]


呼吸商は、次の様に定義されています。
嫌気的代謝と好気的代謝が行われると、栄養素は、二酸化炭素と水とに分解されます。
そのため、栄養素内の炭素原子と同じ数の二酸化炭素が生成します。また、栄養素内の水素原子の半分の数の水が生成します。


栄養素内の炭素原子1個と栄養素内の酸素原子2個とが結合して、二酸化炭素を生成し、個体外へ呼気中に排出します。
また、栄養素内の水素原子2個と栄養素内の酸素原子1個とが結合して、水を生成し、個体外へ排出することもあります。
栄養素内の酸素原子だけでは足りないので、栄養素内の炭素原子1個と吸気中の酸素原子2個とが結合して、二酸化炭素を生成し、個体外へ呼気中に排出します。
また、栄養素内の水素原子2個と吸気中の酸素原子1個とが結合して、水を生成し、個体外へ排出することもあります。


ブドウ糖にもヘキサン酸にも炭素原子は6個あるので、代謝されると二酸化炭素は6個生成します。そのために必要な酸素原子は12個です。<br>
ブドウ糖にもヘキサン酸にも水素原子は12個あるので、代謝されると水は6個生成します。そのために必要な酸素原子は6個です。<br>
ブドウ糖でもヘキサン酸でも、代謝において二酸化炭素のために12個、水のために6個、合わせて18個の酸素原子が必要です。<br>
ブドウ糖でもヘキサン酸でも、栄養素内には酸素原子が18個もないので、空気を吸ってその中の酸素原子を使わなくてはなりません。<br>
ブドウ糖内には酸素原子が6個あるので、吸気中の酸素原子は12個使わなくてはなりません。<br>
ヘキサン酸内には酸素原子が2個しかないので、吸気中の酸素原子は16個も使わなくてはなりません。<br>


          単位時間あたりのCO<sub>2</sub>排出量<br />
呼吸商は呼気に出した二酸化炭素排泄量割る吸気中の酸素分子(O<sub>2</sub>)消費量です。<br>
呼吸商= ----------------------------------<br />
ブドウ糖など糖質は呼気中の二酸化炭素排泄量が6で吸気中の酸素分子(O<sub>2</sub>)消費量が6であるため呼吸商は1になります。<br>
           単位時間あたりのO<sub>2</sub>消費量
また、ヘキサン酸など脂質は呼気中の二酸化炭素排泄量が6で吸気中の酸素分子(O<sub>2</sub>)消費量が8であるため呼吸商は0.75になります。<br>
 
 
 
三大栄養素は、糖、脂質、タンパク質であり、それぞれ、炭素原子、酸素原子、水素原子などの構成割合が異なります。そのため、内呼吸のとき、どの栄養素が分解しているかにより、消費されるO<sub>2</sub>と産生されるCO<sub>2</sub>の割合が異なります。体細胞全体である栄養素が主に代謝されているとき、その割合は、呼吸にも反映されるはずです。それを表現したのが、呼吸商なのです。
 
 
 
[[ファイル:呼吸商.jpg|alt=呼吸商.jpg|left|400px]] 脂質: 脂肪酸の構造を考えてみると、炭素原子(C)の鎖のようなものです。脂肪酸自体の中に酸素原子が非常に少ないため、分解するときは多くの酸素を消費しなければなりません。O<sub>2</sub>消費量の割には、CO<sub>2</sub>産生量が少ないため、呼吸商は、0.71と三大栄養素の中では最小です。脂肪は、酸素の含有率が低いので、重量あたりの熱量は、9.3kcal/gと三大栄養素中最大です。エネルギーを保存する場合に適した栄養素であり、過食により皮下に貯蔵されるのも脂質です。
 
 
糖類: 一般的に、原子の割合はC<sub>6</sub>H<sub>12</sub>0<sub>6</sub>です。酸素原子が多く含まれているため、酸素消費量は少なくても分解できます。呼吸商は、1.00と三大栄養素の中では最大です。逆に、酸素の含有が高いので、重量あたりの熱量は、4.1kcal/gと三大栄養素中最小です。
 
 
タンパク質: 原子の割合は脂質と糖質の中間であり、呼吸商は、0.85、熱量は、5.3kcal/gです。
 


まとめると、<br>
糖質では、脂質に比べて、栄養素内の酸素が多いので、消費する吸気中の酸素が少ないのです。吸気中の酸素消費量は分母であり、糖質では脂質より分母が小さいので呼吸商は大きいのです。<br>
逆に脂質では、糖質に比べて、栄養素内の酸素が少ないので、消費する吸気中の酸素が多いのです。吸気中の酸素消費量は分母であり、脂質では糖質より分母が大きいので呼吸商は小さいのです。
[[ファイル:呼吸商.jpg|left|500px]]糖類: 一般的に、原子の割合はC<sub>6</sub>H<sub>12</sub>0<sub>6</sub>です。酸素原子が多く含まれているため、酸素消費量は少なくても分解できます。呼吸商は、1.00と三大栄養素の中では最大です。逆に、酸素の含有が高いので、重量あたりの熱量は、4.1kcal/gと三大栄養素中最小です。<br>
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脂質: 脂肪酸の構造を考えてみると、炭素原子(C)の鎖のようなものです。脂肪酸自体の中に酸素原子が少ないため、分解するときは多くの酸素を消費しなければなりません。O<sub>2</sub>消費量の割には、CO<sub>2</sub>排出量が少ないため、例えばヘキサン酸の呼吸商は、0.75とブドウ糖よりも少ないです。脂肪は、酸素の含有率が低いので、重量あたりの熱量は、9.3kcal/gと三大栄養素中最大です。エネルギーを保存する場合に適した栄養素であり、過食により皮下に貯蔵されるのも脂質です。<br>
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タンパク質: 原子の割合は脂質と糖質の中間であり、呼吸商は、0.85、熱量は、5.3kcal/gです。<br>
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摂取した後のエネルギー量は、吸収効率も勘案し、糖質:4 kcal/g、たんぱく質:4 kcal/g、脂質:9 kcal/gです。


{{QuizTitle}}
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<GIFT>
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::チャレンジクイズ::
//LEVEL:3  
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//RAND  
//RAND  
生体のCO<sub>2</sub>排泄量のO<sub>2</sub>摂取量に対する比を {= 呼吸商.~換気量}という。  
生体のCO<sub>2</sub>排泄量のO<sub>2</sub>摂取量に対する比を {=呼吸商~換気量}という。  
 
//LEVEL:3  
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//RAND  
//RAND  
呼吸商とは、{~O<sub>2</sub>摂取量のCO<sub>2</sub>排泄量に対する比.=CO<sub>2</sub>排泄量のO<sub>2</sub>摂取量に対する比}である。  
呼吸商とは、{~O<sub>2</sub>摂取量のCO<sub>2</sub>排泄量に対する比~=CO<sub>2</sub>排泄量のO<sub>2</sub>摂取量に対する比}である。  
 
//LEVEL:3  
//LEVEL:3  
//RAND  
//RAND  
呼吸商は、その時消費されている栄養素の {=種類.~量}が示唆される。  
呼吸商は、その時消費されている栄養素の {=種類~量}が示唆される。  
//LEVEL:3
 
//LEVEL:2
//RAND
(含有する炭素原子が同数の場合)糖質と脂質とでは、脂質の方が含有する酸素原子は {=少ない~多い}。
 
//LEVEL:1
//RAND  
//RAND  
糖質と脂質とでは、脂質の方が含有する酸素原子は {=少ない.~多い}。  
(含有する炭素原子が同数の場合)糖質と脂質とでは、脂質の方が含有する酸素原子は {=少ない~多い}。  
[[画像:Respiratory quotient.jpg|590px]]
 
//LEVEL:2  
//LEVEL:2  
//RAND  
//RAND  
ぶどう糖と脂質とでは、脂質の方が呼吸商は {~大きい.=小さい}。  
ぶどう糖と脂質とでは、脂質の方が呼吸商は {~大きい~=小さい}。  
 
//LEVEL:1  
//LEVEL:1  
//RAND  
//RAND  
ブドウ糖の呼吸商は、約{~0.7.=1.0}である。  
ぶどう糖と脂質とでは、脂質の方が呼吸商は {~大きい~=小さい}。
//LEVEL:3
[[画像:Respiratory quotient.jpg|590px]]
 
//LEVEL:2
//RAND
ブドウ糖の呼吸商は、約{~0.7~=1.0}である。
 
//LEVEL:1
//RAND
ブドウ糖の呼吸商は、約{~0.7~=1.0}である。
[[画像:Respiratory quotient.jpg|590px]]
 
//LEVEL:2
//RAND
脂質の呼吸商は、約{=0.7~1.0}である。  
 
//LEVEL:1
//RAND  
//RAND  
脂質の呼吸商は、約{=0.7.~1.0}である。  
脂質の呼吸商は、約{=0.7~1.0}である。  
[[画像:Respiratory quotient.jpg|590px]]
</GIFT>
</GIFT>

2024年3月12日 (火) 15:09時点における最新版

POINT!

動画と音声での説明 三大栄養素は、糖、脂質、タンパク質であり、それぞれ、炭素原子(C)、酸素原子(O)、水素原子(H)などの構成割合が異なります。そのため、内呼吸のとき、どの栄養素が分解しているかにより、消費されるO2と排出されるCO2の割合が異なります。それを表現したのが、呼吸商です。

Respiratory quotient.jpg

嫌気的代謝と好気的代謝が行われると、栄養素は、二酸化炭素と水とに分解されます。 そのため、栄養素内の炭素原子と同じ数の二酸化炭素が生成します。また、栄養素内の水素原子の半分の数の水が生成します。

栄養素内の炭素原子1個と栄養素内の酸素原子2個とが結合して、二酸化炭素を生成し、個体外へ呼気中に排出します。 また、栄養素内の水素原子2個と栄養素内の酸素原子1個とが結合して、水を生成し、個体外へ排出することもあります。 栄養素内の酸素原子だけでは足りないので、栄養素内の炭素原子1個と吸気中の酸素原子2個とが結合して、二酸化炭素を生成し、個体外へ呼気中に排出します。 また、栄養素内の水素原子2個と吸気中の酸素原子1個とが結合して、水を生成し、個体外へ排出することもあります。

ブドウ糖にもヘキサン酸にも炭素原子は6個あるので、代謝されると二酸化炭素は6個生成します。そのために必要な酸素原子は12個です。
ブドウ糖にもヘキサン酸にも水素原子は12個あるので、代謝されると水は6個生成します。そのために必要な酸素原子は6個です。
ブドウ糖でもヘキサン酸でも、代謝において二酸化炭素のために12個、水のために6個、合わせて18個の酸素原子が必要です。
ブドウ糖でもヘキサン酸でも、栄養素内には酸素原子が18個もないので、空気を吸ってその中の酸素原子を使わなくてはなりません。
ブドウ糖内には酸素原子が6個あるので、吸気中の酸素原子は12個使わなくてはなりません。
ヘキサン酸内には酸素原子が2個しかないので、吸気中の酸素原子は16個も使わなくてはなりません。

呼吸商は呼気に出した二酸化炭素排泄量割る吸気中の酸素分子(O2)消費量です。
ブドウ糖など糖質は呼気中の二酸化炭素排泄量が6で吸気中の酸素分子(O2)消費量が6であるため呼吸商は1になります。
また、ヘキサン酸など脂質は呼気中の二酸化炭素排泄量が6で吸気中の酸素分子(O2)消費量が8であるため呼吸商は0.75になります。

まとめると、
糖質では、脂質に比べて、栄養素内の酸素が多いので、消費する吸気中の酸素が少ないのです。吸気中の酸素消費量は分母であり、糖質では脂質より分母が小さいので呼吸商は大きいのです。
逆に脂質では、糖質に比べて、栄養素内の酸素が少ないので、消費する吸気中の酸素が多いのです。吸気中の酸素消費量は分母であり、脂質では糖質より分母が大きいので呼吸商は小さいのです。

呼吸商.jpg

糖類: 一般的に、原子の割合はC6H1206です。酸素原子が多く含まれているため、酸素消費量は少なくても分解できます。呼吸商は、1.00と三大栄養素の中では最大です。逆に、酸素の含有が高いので、重量あたりの熱量は、4.1kcal/gと三大栄養素中最小です。


脂質: 脂肪酸の構造を考えてみると、炭素原子(C)の鎖のようなものです。脂肪酸自体の中に酸素原子が少ないため、分解するときは多くの酸素を消費しなければなりません。O2消費量の割には、CO2排出量が少ないため、例えばヘキサン酸の呼吸商は、0.75とブドウ糖よりも少ないです。脂肪は、酸素の含有率が低いので、重量あたりの熱量は、9.3kcal/gと三大栄養素中最大です。エネルギーを保存する場合に適した栄養素であり、過食により皮下に貯蔵されるのも脂質です。

タンパク質: 原子の割合は脂質と糖質の中間であり、呼吸商は、0.85、熱量は、5.3kcal/gです。

摂取した後のエネルギー量は、吸収効率も勘案し、糖質:4 kcal/g、たんぱく質:4 kcal/g、脂質:9 kcal/gです。

Challenge Quiz

1.

生体のCO2排泄量のO2摂取量に対する比を  呼吸商 換気量 という。

2.

呼吸商とは、 O2摂取量のCO2排泄量に対する比 CO2排泄量のO2摂取量に対する比 である。

3.

呼吸商は、その時消費されている栄養素の  種類 が示唆される。

4.

(含有する炭素原子が同数の場合)糖質と脂質とでは、脂質の方が含有する酸素原子は  少ない 多い

5.

(含有する炭素原子が同数の場合)糖質と脂質とでは、脂質の方が含有する酸素原子は  少ない 多い

/wiki/images/7/70/Respiratory_quotient.jpg
6.

ぶどう糖と脂質とでは、脂質の方が呼吸商は  大きい 小さい

7.

ぶどう糖と脂質とでは、脂質の方が呼吸商は  大きい 小さい

/wiki/images/7/70/Respiratory_quotient.jpg
8.

ブドウ糖の呼吸商は、約 0.7 1.0 である。

9.

ブドウ糖の呼吸商は、約 0.7 1.0 である。

/wiki/images/7/70/Respiratory_quotient.jpg
10.

脂質の呼吸商は、約 0.7 1.0 である。

11.

脂質の呼吸商は、約 0.7 1.0 である。

/wiki/images/7/70/Respiratory_quotient.jpg