電解質と体液/病態/酸・塩基平衡-主な病態生理-

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腎不全

糸球体の破壊が主病変です.そのため,リン酸など「糸球体からろ過される不揮発性酸」,すなわち糸球体からのろ過が主な排出経路である酸性物質の排泄が十分に行えない(代謝性アシドーシス)が主たる病態です.血しょうでは酸血症(acidemia),anion gapの増大,重炭酸イオンの減少がみとめられます.呼吸は(酸血症と重炭酸緩衝系でもたらされる高CO2 血症の両方により)代償的に強く刺激されるため,低CO2 血症がもたらされます.


糖尿病性ケトアシドーシス

脂肪の無気的代謝により(「糸球体からろ過される不揮発性酸」である)ケトン体が腎臓の処理能力を超えて生産されること(代謝性アシドーシス)が主たる病態です.そのため,血しょうでは酸血症(acidemia),anion gapの増大,重炭酸イオンの減少がみとめられます.呼吸は(酸血症と重炭酸緩衝系でもたらされる高CO2 血症の両方により)代償的に強く刺激されるため,低CO2 血症がもたらされます.


乳酸性アシドーシス

炭水化物の無気的代謝により(「糸球体からろ過される不揮発性酸」である)乳酸が腎臓の処理能力を超えて生産されること(代謝性アシドーシス)が主たる病態です.そのため,血しょうでは酸血症(acidemia),anion gapの増大,重炭酸イオンの減少がみとめられます.呼吸は(酸血症と重炭酸緩衝系でもたらされる高CO2 血症の両方により)代償的に強く刺激されるため,低CO2 血症がもたらされます.


下痢・尿細管性アシドーシス(2型,近位型)

代謝性アシドーシスをもたらすが,代謝性アシドーシスをもたらす他の疾患とは異なり,H+の増大が最初ではなく,アルカリ性物質である重炭酸イオン(HCO3-)の喪失が主たる病態です.血しょうでは重炭酸イオンの不足を補うように重炭酸緩衝系が(H++HCO3-←H2CO3←H2O+CO2)方向へ移動するため,水素イオンが増大(代謝性アシドーシス)し,酸血症(acidemia)がもたらされます. 代謝性アシドーシスをもたらす他の疾患での重炭酸緩衝系の移動方向( H++HCO3-→H2CO3→H2O+CO2) とは逆です. 「糸球体からろ過される不揮発性酸」が増大するわけではないので,血しょうのanion gapは増大しません.また,呼吸は酸血症で刺激されるため,低CO2 血症がもたらされます.


低アルドステロン症・尿細管性アシドーシス(1型,遠位型)

腎臓のH+排泄機能低下がもたらす代謝性アシドーシス(による酸血症)が主な病態です.重炭酸緩衝系の(H++HCO3-→H2CO3→H2O+CO2)方向の作用によりHCO3-が減少します.血しょうのanion gapは増大しない.また,呼吸は酸血症で刺激されるため,低CO2 血症がもたらされます.


嘔吐

胃酸(塩酸,HCl)の喪失(代謝性アルカローシス)が主たる病態です.アルカリ血症を緩衝するために,重炭酸緩衝系が水素イオンを供給する方向(H++HCO3-←H2CO3←H2O+CO2)へ移動するため,重炭酸イオンが増大します.また呼吸は(アルカリ血症と重炭酸緩衝系でもたらされる低CO2血症の両方により)代償的に強く抑制されるため,高CO2血症がもたらされます.


アルドステロン症

腎臓のH+排泄機能亢進がもたらす代謝性アルカローシス(によるアルカリ血症)が主な病態です.重炭酸緩衝系の(H++HCO3-←H2CO3←H2O+CO2)方向の作用によりHCO3-が増大します.アルカリ血症による呼吸抑制のため高CO2血症がもたらされます.


呼吸不全

肺炎などによる肺の機能低下がもたらす高CO2血症が主な病態です.重炭酸緩衝系の(H++HCO3-←H2CO3←H2O+CO2)方向の作用により水素イオンが増大(呼吸性アシドーシス)して酸血症がもたらされるわけです.この際,重炭酸イオンは増大します.「糸球体からろ過される不揮発性酸」が増大するわけではないので,anion gapは増大しません.また,急性の場合,腎臓の代償は働いていません.呼吸不全が数日持続すると,腎臓の代償(水素イオンの排泄増大)のため,酸血症は是正され,重炭酸イオンはさらに(一応の目安として30mEq/Lを超えて)増大します.


過換気症候群

肺の機能亢進がもたらす低CO2血症が主な病態です.重炭酸緩衝系の(H++HCO3-→H2CO3→H2O+CO2)方向の作用により水素イオンが減少して(呼吸性アルカローシスにより)アルカリ血症がもたらされるわけです.この際,重炭酸イオンは減少します.また,急性の場合,腎臓の代償は働いていません.過換気が数日持続すると,腎臓の代償(水素イオンの排泄低下)のため,アルカリ血症は是正され,重炭酸イオンはさらに(一応の目安として18mEq/Lを下回って)減少します.