「電解質と体液/pH調節関連の用語定義/酸性物質の分類-2-」の版間の差分

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{{TitleSmall|滴定酸}}
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=NaOH(強アルカリ)で中和される酸性物質.尿中の酸性物質を定量する際,多くの酸性物質を別々に定量することは困難かつ煩雑であるため,一定量の尿がどれだけのNaOHで中和されるか?で定量する.
=NaOH(強アルカリ)で中和される酸性物質。尿中の酸性物質を定量する際、多くの酸性物質を別々に定量することは困難かつ煩雑であるため、一定量の尿がどれだけのNaOHで中和されるか?で定量する。


<ul>
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<li>尿において滴定酸を定量するときは,「尿のpHを(7.0ではなく)7.4にするのに必要なNaOHの量」が滴定酸の量である. </li>
<li>尿において滴定酸を定量するときは、「尿のpHを(7.0ではなく)7.4にするのに必要なNaOHの量」が滴定酸の量である。 </li>
<li>滴定酸にアンモニウムイオンは含まれない. </li>
<li>滴定酸にアンモニウムイオンは含まれない。 </li>
<li>結局,滴定酸とは,正常人では,尿細管から分泌されたH<sup>+</sup>の量+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が再吸収されて排出したH<sup>+</sup>の量の総和のうち,「糸球体からろ過された不揮発性酸」に緩衝された量である. </li>
<li>結局、滴定酸とは、正常人では、尿細管から分泌されたH<sup>+</sup>の量+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が再吸収されて排出したH<sup>+</sup>の量の総和のうち、「糸球体からろ過された不揮発性酸」に緩衝された量である。 </li>
<li>酸血症,アルカリ血症のある患者では,滴定酸とは,尿細管から分泌されたH<sup>+</sup>の量+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が再吸収されて排出したH<sup>+</sup>の量+「糸球体からろ過される不揮発性酸」の増減分に結合しているHの量の総和である. </li>
<li>酸血症、アルカリ血症のある患者では、滴定酸とは、尿細管から分泌されたH<sup>+</sup>の量+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が再吸収されて排出したH<sup>+</sup>の量+「糸球体からろ過される不揮発性酸」の増減分に結合しているHの量の総和である。 </li>
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左上:乳酸,ケトン体,リン酸,硫酸などの「糸球体からろ過される不揮発性酸」が生体と同じ濃度で水溶液中にあると,多くの水素原子(H)を結合しており,同時に多くの水素イオン(H<sup>+</sup>)を解離してpHは約3となる.
左上:乳酸、ケトン体、リン酸、硫酸などの「糸球体からろ過される不揮発性酸」が生体と同じ濃度で水溶液中にあると、多くの水素原子(H)を結合しており、同時に多くの水素イオン(H<sup>+</sup>)を解離してpHは約3となる。




右上:血しょうでは,同じ濃度の「糸球体からろ過される不揮発性酸」があっても重炭酸緩衝系(図中のHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)に代表される血しょう緩衝系がH<sup>+</sup>を中和して減少させ(H<sup>+</sup>の数は7&rarr;3に減少),「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合しているHも減少させている.pHは7.4まで増大している.
右上:血漿では、同じ濃度の「糸球体からろ過される不揮発性酸」があっても重炭酸緩衝系(図中のHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)に代表される血漿緩衝系がH<sup>+</sup>を中和して減少させ(H<sup>+</sup>の数は7&rarr;3に減少)、「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合しているHも減少させている。pHは7.4まで増大している。




左下:腎臓は,
左下:腎臓は、


*1.「糸球体からろ過される不揮発性酸」
*1.「糸球体からろ過される不揮発性酸」
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により,酸性物質を排泄している(前述).そのため,HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>は血しょうよりも減少している(血しょうでは4コ,尿では1コ).また,分泌,生成したH<sup>+</sup>は,
により、酸性物質を排泄している(前述)。そのため、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>は血漿よりも減少している(血漿では4コ、尿では1コ)。また、分泌、生成したH<sup>+</sup>は、




*1.「糸球体からろ過される不揮発性酸」による緩衝
*1.「糸球体からろ過される不揮発性酸」による緩衝


*2.アンモニア(NH<sub>3</sub>)による緩衝を受ける(前述).そのため,
*2.アンモニア(NH<sub>3</sub>)による緩衝を受ける(前述)。そのため、


*尿中には「糸球体からろ過される不揮発性酸」があり,血しょう中でも結合していたH(赤い四葉のクローバの中心にある右側のH)ならびに,緩衝作用によって増えたH(左側のH)が結合している.
*尿中には「糸球体からろ過される不揮発性酸」があり、血漿中でも結合していたH(赤い四葉のクローバの中心にある右側のH)ならびに、緩衝作用によって増えたH(左側のH)が結合している。


*尿中にはアンモニウムイオン(NH<sub>4</sub><sup>+</sup>)がある.
*尿中にはアンモニウムイオン(NH<sub>4</sub><sup>+</sup>)がある。


*尿中のH<sup>+</sup>(5コ)は血しょう中のH<sup>+</sup>(3コ)より多い.すなわち,尿のpHは血しょうよりも低い.
*尿中のH<sup>+</sup>(5コ)は血漿中のH<sup>+</sup>(3コ)より多い。すなわち、尿のpHは血漿よりも低い。




右下:左下の尿にある一定量のNaOHを混入すると,pHは7.4にもどる.この際,尿中で血しょうよりも増大した H<sup>+</sup>(2つ)も,「糸球体からろ過される酸性物質」に緩衝され結合したHも,ナトリウムイオン(Na<sup>+</sup>)ないし,ナトリウム(Na)に置換される.結局,解離しているH<sup>+</sup>の量も「糸球体からろ過される酸性物質」に結合しているHの量も血しょうと同等となる.
右下:左下の尿にある一定量のNaOHを混入すると、pHは7.4にもどる。この際,尿中で血漿よりも増大した H<sup>+</sup>(2つ)も、「糸球体からろ過される酸性物質」に緩衝され結合したHも、ナトリウムイオン(Na<sup>+</sup>)ないし、ナトリウム(Na)に置換される。結局、解離しているH<sup>+</sup>の量も「糸球体からろ過される酸性物質」に結合しているHの量も血漿と同等となる。




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=アンモニウムイオン
=アンモニウムイオン


アンモニウムイオンはpH7附近ではH<sup>+</sup>を解離させないため,NaOHに中和されない=滴定酸ではない.
アンモニウムイオンはpH7附近ではH<sup>+</sup>を解離させないため、NaOHに中和されない=滴定酸ではない。




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炭素(C)を含む酸性物質が「有機酸」であり,含まない酸性物質が「無機酸」である.乳酸,ケトン体などが有機酸であり,リン酸,硫酸,アンモニウムイオン(NH<sub>4</sub><sup>+</sup>)などが無機酸である.
炭素(C)を含む酸性物質が「有機酸」であり、含まない酸性物質が「無機酸」である。乳酸、ケトン体などが有機酸であり、リン酸、硫酸、アンモニウムイオン(NH<sub>4</sub><sup>+</sup>)などが無機酸である。




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//LEVEL:3  
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//RAND  
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アンモニウムイオンは滴定酸で {~ある~=はない}.
アンモニウムイオンは滴定酸で{~ある~=はない}


//LEVEL:3  
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//RAND  
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尿中の滴定酸の量は尿のpHを {~7.0~=7.4}にするのに必要な {=NaOH~H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>~H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>~HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>}の量である.
尿中の滴定酸の量は尿のpHを{~7.0~=7.4}にするのに必要な {=NaOH~H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>~H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>~HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>}の量である。


//LEVEL:3  
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//RAND  
//RAND  
滴定酸に含まれるモノは.選択肢のうち.{~正常人の血中にもある「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合しているHの量~=腎不全患者などにおいて、「糸球体からろ過される不揮発性酸」の増量分に結合しているHの量~=HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が再吸収されて生成し、「糸球体からろ過された不揮発性酸」に緩衝されたH<sup>+</sup>の量~HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が再吸収されて生成し、アンモニア(NH<sub>3</sub>)に緩衝されたH<sup>+</sup>の量~=尿細管から分泌されて「糸球体からろ過された不揮発性酸」に緩衝されたH<sup>+</sup>の量~尿細管から分泌されてアンモニア(NH<sub>3</sub>)に緩衝されたH<sup>+</sup>の量}である.
滴定酸に含まれるモノは、選択肢のうち、{~正常人の血中にもある「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合しているHの量~=腎不全患者などにおいて、「糸球体からろ過される不揮発性酸」の増量分に結合しているHの量~=HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が再吸収されて生成し、「糸球体からろ過された不揮発性酸」に緩衝されたH<sup>+</sup>の量~HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が再吸収されて生成し、アンモニア(NH<sub>3</sub>)に緩衝されたH<sup>+</sup>の量~=尿細管から分泌されて「糸球体からろ過された不揮発性酸」に緩衝されたH<sup>+</sup>の量~尿細管から分泌されてアンモニア(NH<sub>3</sub>)に緩衝されたH<sup>+</sup>の量}である。


//LEVEL:3  
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//RAND  
//RAND  
乳酸は {=有機酸~無機酸}である.
乳酸は、{=有機酸~無機酸}である。


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ケトン体は {=有機酸~無機酸}である.
ケトン体は、{=有機酸~無機酸}である。


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リン酸は {~有機酸~=無機酸}である.
リン酸は、{~有機酸~=無機酸}である。


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硫酸は {~有機酸~=無機酸}である.
硫酸は、{~有機酸~=無機酸}である。
</GIFT>
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2015年7月3日 (金) 13:18時点における版

尿中の酸性物質がNaOHで中和されるかどうかの分類

滴定酸

=NaOH(強アルカリ)で中和される酸性物質。尿中の酸性物質を定量する際、多くの酸性物質を別々に定量することは困難かつ煩雑であるため、一定量の尿がどれだけのNaOHで中和されるか?で定量する。

  • 尿において滴定酸を定量するときは、「尿のpHを(7.0ではなく)7.4にするのに必要なNaOHの量」が滴定酸の量である。
  • 滴定酸にアンモニウムイオンは含まれない。
  • 結局、滴定酸とは、正常人では、尿細管から分泌されたH+の量+HCO3-が再吸収されて排出したH+の量の総和のうち、「糸球体からろ過された不揮発性酸」に緩衝された量である。
  • 酸血症、アルカリ血症のある患者では、滴定酸とは、尿細管から分泌されたH+の量+HCO3-が再吸収されて排出したH+の量+「糸球体からろ過される不揮発性酸」の増減分に結合しているHの量の総和である。


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左上:乳酸、ケトン体、リン酸、硫酸などの「糸球体からろ過される不揮発性酸」が生体と同じ濃度で水溶液中にあると、多くの水素原子(H)を結合しており、同時に多くの水素イオン(H+)を解離してpHは約3となる。


右上:血漿では、同じ濃度の「糸球体からろ過される不揮発性酸」があっても重炭酸緩衝系(図中のHCO3-)に代表される血漿緩衝系がH+を中和して減少させ(H+の数は7→3に減少)、「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合しているHも減少させている。pHは7.4まで増大している。


左下:腎臓は、

*1.「糸球体からろ過される不揮発性酸」

*2.「尿細管から分泌される不揮発性酸」その1:HCO3-の再吸収による水素イオン(H+)の排出

*3.「尿細管から分泌される不揮発性酸」その2:水素イオン(H+)の分泌


により、酸性物質を排泄している(前述)。そのため、HCO3-は血漿よりも減少している(血漿では4コ、尿では1コ)。また、分泌、生成したH+は、


*1.「糸球体からろ過される不揮発性酸」による緩衝

*2.アンモニア(NH3)による緩衝を受ける(前述)。そのため、

*尿中には「糸球体からろ過される不揮発性酸」があり、血漿中でも結合していたH(赤い四葉のクローバの中心にある右側のH)ならびに、緩衝作用によって増えたH(左側のH)が結合している。

*尿中にはアンモニウムイオン(NH4+)がある。

*尿中のH+(5コ)は血漿中のH+(3コ)より多い。すなわち、尿のpHは血漿よりも低い。


右下:左下の尿にある一定量のNaOHを混入すると、pHは7.4にもどる。この際,尿中で血漿よりも増大した H+(2つ)も、「糸球体からろ過される酸性物質」に緩衝され結合したHも、ナトリウムイオン(Na+)ないし、ナトリウム(Na)に置換される。結局、解離しているH+の量も「糸球体からろ過される酸性物質」に結合しているHの量も血漿と同等となる。


滴定酸ではない酸性物質


=アンモニウムイオン

アンモニウムイオンはpH7附近ではH+を解離させないため、NaOHに中和されない=滴定酸ではない。


炭素を含むかどうかの分類


炭素(C)を含む酸性物質が「有機酸」であり、含まない酸性物質が「無機酸」である。乳酸、ケトン体などが有機酸であり、リン酸、硫酸、アンモニウムイオン(NH4+)などが無機酸である。


Challenge Quiz

1.

アンモニウムイオンは滴定酸で ある はない

2.

尿中の滴定酸の量は尿のpHを 7.0 7.4 にするのに必要な  NaOH H3PO4 H2SO4 HCO3- の量である。

3.

滴定酸に含まれるモノは、選択肢のうち、 正常人の血中にもある「糸球体からろ過される不揮発性酸」に結合しているHの量 腎不全患者などにおいて、「糸球体からろ過される不揮発性酸」の増量分に結合しているHの量 HCO3-が再吸収されて生成し、「糸球体からろ過された不揮発性酸」に緩衝されたH+の量 HCO3-が再吸収されて生成し、アンモニア(NH3)に緩衝されたH+の量 尿細管から分泌されて「糸球体からろ過された不揮発性酸」に緩衝されたH+の量 尿細管から分泌されてアンモニア(NH3)に緩衝されたH+の量 である。

4.

乳酸は、 有機酸 無機酸 である。

5.

ケトン体は、 有機酸 無機酸 である。

6.

リン酸は、 有機酸 無機酸 である。

7.

硫酸は、 有機酸 無機酸 である。