カップの中の水にインクを一滴たらしました。左図の真ん中にある赤い点の集まりが、インクの一滴としましょう。水の中に、インクに関して、高濃度の部分と低濃度の部分とができてしまったのです。すると、
徐々にインクは広がります。すなわち、溶質(水溶液に溶けているもの)が、高濃度の場所(真ん中付近)から低濃度の場所(周辺)へ移動します。
この動きにより、インクはやがてカップの水全体に広がります。このとき、溶媒(水)は移動しません。このような動きを「拡散」といいます。
次に、溶質が高濃度の部分の周囲に、球状の膜があったとしましょう。
この膜は、その溶質の動きを阻止しないのであれば、
膜がない場合と同様に拡散は生じ、濃度差はなくなります。
拡散は、生体内では肺においてみとめられます。肺胞内は酸素が多いですが、毛細血管の肺動脈側では逆に少ないです。そのため、酸素は拡散により、肺胞内から毛細血管内へ受動的に移動します。二酸化炭素は逆方向(毛細血管→肺胞)の拡散により、肺胞内へ排出されます。生体内における拡散はATPなどの高エネルギー物質を使わない、受動的な過程です。